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今日見た夢を思い出す。笑う紗苗さんの手に持っている本。
あれはどんなのだったか。早く思い出さないと、と申し訳なくなり、必死に考えていると、少し思い出した。
「違う、紺色だ」
そう言って、女の子を見る。
「文庫本では……」
「文庫本ではなかったような」と続けようとして、それはあまり参考にはならないかな、と思った。
思ったその時、目についた。
その本がなんてタイトルだったかはまだ分からない。
表紙も紺色だってことしか分からない。だけど、確信した。
「それだ!」
急に大声を出した僕に女の子が驚いている。
そして、周りの人に見られた。
しまった、つい大きい声を出してしまった。
慌てて「すみません」と頭を下げると、僕へ向いていた視線はなくなった。
「この本、ですか?」
女の子がそれまでずっと手に持っていた本を僕に見せる。
僕はそれを見て、更に深く確信した。
「うん、僕が探していたのは、その本だ」
いつか紗苗さんが見せてくれた本と同じ。
タイトルと見てもピンとこないけど、絶対に同じだ。
気分が高揚して、必死に小さな声で喋ろうと頑張る。
僕の言葉に女の子は申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい、この本ずっと私が持っていたから、本棚になかったんです」
なるほど、それで見つからなかったのか。
そう思ったが、すぐに気づく。
多分、僕はこれが本棚に並んでいてもきっと見つけられなかっただろう。
「いやいや、謝らないで。多分、他の本と一緒に並んでいたら僕は分からなかっただろうし。君のおかげで見つかったんだよ」
そう言うと女の子は嬉しそうに笑った。
こんなに無邪気な笑顔は久しぶりに見たような気がする。
少しだけ紗苗さんに似ていると思った。
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