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「見つかって本当に良かったです。どうぞ」
女の子に本を差し出されて戸惑う。
これ、この子が借りようと思って持っていたんじゃないか。
探すのは手伝ってもらったけど、今ここでこれを受け取るほど僕は図々しくない。
「これは君が、」
断ろうと口を開くと、女の子が僕の言いたいことを察したかのように言った。
「いいんです。私もこの本大好きで、もう何回も読んでいるので。今日はなんとなく借りようかと思っただけで別に今日じゃなくてもいいですし。どうぞ、あなたに読んでみて欲しいです」
それなら、と再び差し出された本を受け取ると、思っていたよりも軽かった。
これが、紗苗さんが大好きだった本。
何回も読んでいた本。
なんとなく表紙を撫でてみる。
きっと紗苗さんもここの図書館で借りたんだろう。
そう思うと、胸が熱くなってきた。
自分が思っていた以上に見つかったことが嬉しかった。
「ありがとう。一緒に探してくれたうえに譲ってもらって、申し訳ないな」
「いいえ、たまたま持っていただけで何もしていませんよ。一瞬で見つかりましたし。だけどまさかその本を探していたなんてびっくりしました」
何もしていないと言っても、この子が声をかけてくれなかったら僕は何日ここでうろうろしていたか分からない。
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