私と私

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原稿の通りに声劇は始まった。物語は、入学一週間後の高校1年生の教室。 最初は、「杏」と席が隣同士になった「京子」は、「杏」と仲良くなるためにどうすればいいか、「大和」と「誠」に相談する場面だった。 ―京子「杏ちゃん、めっちゃ優しいし!もっと仲良くなりたいんやけど、なんか思うように話せんのよね~ 私の話し方が悪いんかな?」  さつき先輩、標準語ではないイントネーションで話し始めた。彼女なりの「京子」の設定なのだろうか。 ―大和「気にしすぎじゃん?少ししたら自然と打ち解けるだろ。」 今度は海人先輩。つい先ほどまでぴょんぴょんしていた人が、今度はどうでもいいオーラを放っている。 ―誠「京子の話し方は見てる限り問題ないけどな~親しみやすいし、俺も京子とすぐ打ち解けたじゃん。杏の方に何か気になることとか、抱えてることとかありそうじゃない?」 裕太先輩、クラスに一人はいるであろう優しいイケメン男子ポジを完璧に演じてる。人任せな態度を取っていた彼は、もうそこにはいない。 会話は進み、3人で杏に話を聞いてみるという結論に至った。 正直、3人の先輩の声劇を聞いて、圧倒されてしまった。内容より、3人の演技力の方に注目して耳を傾けていた。 そして、「杏」のセリフ部分がやってくる。私なんかが演じても、3人みたいになりきることなんてできるはずがない。 ―杏「京子ちゃん! それに大和くんと誠くんまで…急にどうしたの?」 やっぱり私ぎこちない!不自然!違和感しかないよこんなの! ―京子「あのな杏ちゃん、その、言いにくいんやけど。」 ―杏「いいよ、気にしないで言ってみて。」 このセリフで一枚目の原稿が終わった。 紙をめくる。二枚目最初は京子のセリフだった。
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