0人が本棚に入れています
本棚に追加
「最後の方、俺たちと張り合えるくらい演じれてたじゃん。やるね~」
「裕太先輩の一言があったからじゃないっすか?」
「海人、余計な事言うな」
いつのまにか夢中になってた。やり切った感覚は久しぶり。何かに向き合えた気がする。
「どう?遥ちゃん。気持ちいでしょ?声劇。」
「さつき先輩…」
この先輩はいったい何をどこまで見据えているのだろうか。
「前にさ、見かけたことあったんだよね、遥ちゃんのこと。資料運び、お願いされてるときは笑顔で優しい表情なのに、1人で運び出したら面倒臭そうな渋い顔しててさ…」
見られてたの?!はずかし…
「まあ、自分と重ねちゃったのかもね〜」
「自分?」
「私たち3人だって、最初は別の誰かを演じてた。でも、本当の自分も大切にしてあげないと、いつか苦しむときが絶対来るから。」
「別の自分を求めたくなったら、別の誰かになってみたかったら、声劇で俺らと発散すればいい。」
「裕太先輩、今日いつにもなくかっこいいこと言ってません?」
「いつにもなくとか言うな!」
不覚にも気づいてしまった。
この空間が居心地がいいと。
覚えてしまった。
この空気の感覚を。
いつぶりだろうか、心から何かを楽しいと思ったのは。
何かを面白いと感じたのは。
本当の私が笑ったのは。
「先輩たち2人で言い合っても、何も変わらないと思いますけどね。」
「遥!!お前言ったな??」
「意外と毒舌なんか???」
「これから遥ちゃんのいろんな一面を垣間見れるのが楽しみだわ。」
今度は、別のループから抜け出せないかもしれない。
信頼していい人がいる。
素を出しても楽な人たちがいる。
この場所で、素敵な仲間と、想いをぶつけ合える。
その輪からはもう、出たくない。
「先輩たち、これからよろしくお願いします。」
今日から私は、声劇同好会の一員である。
最初のコメントを投稿しよう!