私と私

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「最後の方、俺たちと張り合えるくらい演じれてたじゃん。やるね~」 「裕太先輩の一言があったからじゃないっすか?」 「海人、余計な事言うな」 いつのまにか夢中になってた。やり切った感覚は久しぶり。何かに向き合えた気がする。 「どう?遥ちゃん。気持ちいでしょ?声劇。」 「さつき先輩…」 この先輩はいったい何をどこまで見据えているのだろうか。 「前にさ、見かけたことあったんだよね、遥ちゃんのこと。資料運び、お願いされてるときは笑顔で優しい表情なのに、1人で運び出したら面倒臭そうな渋い顔しててさ…」 見られてたの?!はずかし… 「まあ、自分と重ねちゃったのかもね〜」 「自分?」 「私たち3人だって、最初は別の誰かを演じてた。でも、本当の自分も大切にしてあげないと、いつか苦しむときが絶対来るから。」 「別の自分を求めたくなったら、別の誰かになってみたかったら、声劇で俺らと発散すればいい。」 「裕太先輩、今日いつにもなくかっこいいこと言ってません?」 「いつにもなくとか言うな!」 不覚にも気づいてしまった。 この空間が居心地がいいと。 覚えてしまった。 この空気の感覚を。 いつぶりだろうか、心から何かを楽しいと思ったのは。 何かを面白いと感じたのは。 本当の私が笑ったのは。 「先輩たち2人で言い合っても、何も変わらないと思いますけどね。」 「遥!!お前言ったな??」 「意外と毒舌なんか???」 「これから遥ちゃんのいろんな一面を垣間見れるのが楽しみだわ。」 今度は、別のループから抜け出せないかもしれない。 信頼していい人がいる。 素を出しても楽な人たちがいる。 この場所で、素敵な仲間と、想いをぶつけ合える。 その輪からはもう、出たくない。 「先輩たち、これからよろしくお願いします。」 今日から私は、声劇同好会の一員である。
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