私と私

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高校に入学して、誰も知り合いがいなかった私は、ずっと猫を被ったままだった。 「永谷さーん、これ、職員室まで運んどいてー」 学級委員から仕事を押し付けられても、嫌だとは言わない。 「はーるかちゃん!聞いてよ聞いてよ!!あのね…」 興味のない話をされても、最後まで聞く。 「永谷っていい奴すぎるよな~誰に対しても優しすぎるだろ。」 「結構大人しい雰囲気だよな~でも話してみると優しさの塊。」 クラスメイトの印象はだいたいこんな感じ。 本当はそんなんじゃない。 「最初に作り出してしまった『自分』を貫かないといけない」 という謎の信念が私の中にはあった。自分の中にいる「別の自分」を演じるようになって、私は高校で素の自分を出すことができなくなった。 このまま私は、学校で一度も素を出さずに卒業してしまうのだろうか。 みんなに好感を持たれている「永谷遥」は、永遠になってしまうのだろうか。 考えても無駄だ。自ら変えようとしたって、もう変えられない。手遅れなんだから。
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