顔貸し屋

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 自宅に戻った私は、のろのろとベッドに倒れ込む。いつものような解放感はなく、酷い疲労感ばかりがあった。早く元の顔に戻ろうと、後頭部に手を回す。ボタンを押そうとして、そこにあるはずのものがないことに気付いた。ボタンがない。どうして。私は必死に後頭部をまさぐるが、そこにはなんのとっかかりも見つからなかった。  どうしたことだ。私は頭を掻きむしる。どうにか仮面を取り外す手立てがないものかと顔中を探るが、何もない。これでは仮面が外せない。仮面は綺麗に顔と一体化しており、無理矢理はがそうものなら、恐らく皮膚どころか筋肉ごと持っていかれることになるだろう。どうしよう、どうしたら。  泣きそうになりながら、私は慌てて顔貸し屋に向かった。まだ日の出ている時間帯で、顔貸し屋は営業をしていない。それでも引き下がれない私は引き戸をがんがんと叩いて店主を呼んだ。
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