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ややあって出てきた店主は、私の顔を見るなり、おやおやと笑った。
「あんた、延滞者だね。あれほどダメだって言ったのに」
「すみませんでした……まさかこんなことになるなんて……どうにかこの仮面を外してもらえませんか?」
私の懇願に、しかし店主は首を横に振るばかりだった。
「残念ながら、規則は絶対なんだ。申し訳ないが、君はこれからその顔で生きていくことになる。もう、君の顔ももらってしまったことだしね」
もらってしまった? どういう意味だ。店主の言葉に、私は慌てて店内を見回した。そこには、『新入荷!』と札が貼られた、見慣れた顔が置いてあった。まごうことなき、私の顔だった。
どういうことだ。なんで私の顔がそこにあるんだ。それじゃあ仮面の下の私の顔は、今どうなってしまっているんだ。
「うちも顔がなくっちゃ商売にならないからね……その顔は人気商品だったから残念だけど」
慌てる私に言い聞かせるように、店主が囁いた。
「まぁ、その顔なら、きっと素晴らしい人生が待っているよ」
店主はそう言って愉快そうに笑い、店の扉を閉めた。私はもう一度扉に縋りつくが、店主が扉を開けてくれることはなかった。
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