顔貸し屋

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 前向きになった私は、颯爽と歩き出す。表情には自然と笑みが浮かんでいた。歩きながら、そう言えば、とふと疑問が浮かぶ。この顔の持ち主も私と同じように延滞によって顔を持っていかれたのだろうか。これほど美しい顔をしながら、何故彼女は他の顔を得ようとしたのだろうか。もったいないことをする。私なら、絶対に手放しはしないのに。だって、自分が何をしなくても、周囲が声をかけてくれるのだから。 「もしもし」  そんなことを考えていると、早速男性の声がかかった。ほら見たことか。私はこれ以上ないくらいの魅力的な笑みを浮かべ、振り返る。そこには紺色の制服に身を包んだ男性が二人、立っていた。 「いやぁ、探しましたよ」  黒い手帳を開きながら、男性、警官が私に言う。 「被疑者確保しました」  もう一人の男性の言葉に、私の笑みは仮面のように固まった。
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