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最悪な一日だった。始まりは通勤ラッシュの電車。足が浮きそうなくらいの密度の中、必死に耐えていると痴漢に遭遇。いくら振り払っても追いかけてくるしつこい手からようやく逃れ、うんざりしながら仕事に向かうと、朝から課長の機嫌が悪く、しょうもない小言を聞く羽目に。ようやく解放されたかと思えば、今度は常連のクレーマーから電話がかかってきて、その対応に一時間かかった。先方が満足されたのが昼前。午後の会議の準備が終わっていない為、昼休憩を返上してばたばたと準備をし、その後は日中できなかった事務で残業。そして夜。大してアルコールが強くもないくせに自棄酒をして、一人電柱にもたれながら自身の吐しゃ物を眺める羽目になった。週末だということがせめてもの救いと言えば救いだった。
スマホの通知に気付き画面を見れば、母からのメッセージだった。どうせまた、いつ孫の顔が見られるんだとか、社会人としての自覚を持てとか、そんな話ばかりだろう。私は気付かなかったフリをして、スマホを鞄にしまった。孫どころか、恋人の顔すら見せられそうにもない。
どうしてこんな人生なのだろうか。口元を拭いながら深いため息をついた。私以外の人間はと言えば、皆楽しそうに笑い、日々の暮らしをつつがなく暮らしているように見える。こんなに損ばかり被っているのは、私くらいなものじゃないか。ろくに残業代もつかないのに必死に働いて、そのなけなしのお金でこうして飲んだくれて、そしてそれを吐き出して。何故私は生きているのか。何の為に生きているのか。悲しくなって今度は泣けてきた。
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