顔貸し屋

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 驚愕のあまり出た声は、自身のいつもの声とは程遠い、えらい低音のドスの効いた声だった。毛深い腕で頬をつねってみれば、確かに痛い。夢ではないのだ、私は私ではなくなってしまったのだ。  どうしよう、どうしたら、と泣きそうな頭で必死に記憶を探っていると、昨日のやり取りを一部思い出した。そうだ、確か、戻りたい時には後頭部のボタンを押せと店主は言っていた。  ごわごわとした髪の毛をまさぐると、つむじの下あたりに小さな突起があるのが分かった。これのことか。手探りで、その突起をポチリと押してみる。すると、全身から蒸気のようなものが吹き出し、体がふわっと軽くなった。まるでCGのように、鏡の前の私が見る見るうちにいつもの姿に戻っていく。やがて体が完全に元に戻ったかと思うと、ぽとりと何かが顔から剥がれ落ちた。拾い上げてみれば、それは先ほどまで鏡に映っていた男性の顔だった。仮面は陶器のような材質でできており、その割に非常に軽かった。  なんとかなった、のだろうか。元に戻れた安堵で、その場に膝から崩れ落ちる。酷い目覚めだ。せっかくの休日だというのに。
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