顔貸し屋

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 鏡に映る自身の顔を見て悲鳴を上げた経験があるだろうか。私はある。むしろ、今まさにその経験をしている。何故ならそこに映っていたのは、私の顔とはかけ離れた、男性の顔だったからだ。  思わず自身の顔を手でなぞる。鏡に映る無精ヒゲの男性が、同じ仕草で顔をなぞる。男らしい顔をしているのに、その手つきは女々しい。顔をなぞるたび、ヒゲのぞりぞりとした感触が手に伝わってくる。私だ、今ここにいる男性は間違いなく私なのだ。夢でも見ているのか、と思いながら、今度は体をまさぐる。あるはずのものがなく、ないはずのものがある。股間に手を伸ばした時、私は思わず悲鳴を上げてしまった。  一体何が起きているのか。二日酔いで痛む頭を押さえながら、私は昨日のことを思い出す。
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