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「初めてあったときは、初めましてと挨拶するんでしょ? 私は陽菜。この子は宵。初めまして!」
そう告げた少女に促され、少年も戸惑いながらも言葉を返す。
「初め、まして。おれは郁也。……君たち、兄弟?」
そっくりの顔立ちをした彼らに、分かりきったこととはいえそう尋ねていた。少女はこっくり頷く。
「うん、私達はきょーだいだよ」
「僕が弟、彼女が姉。そっくりでしょう?」
それはまるで双子のようであった。「男女の双子は珍しい」という知識だけはあったので、少年――郁也はまじまじと彼らを見た。確かに、これだけ容姿が似ていて姉弟でないと言われた方が、逆に驚くことなのだが。
「何で、こんなところにいるの?」
「何でって……ねぇ?」
「そうだね、僕たちはここにいることが普通、だから」
彼女らはそう顔を見合わせるが、郁也にはよく分からない。二人は「何て言ったらいいのかな?」などと首を傾げていたけれど、待っていてもどうやら答えも出ないらしい。それなら諦めるよりほかにない。
「それじゃあ、またここに来たら、君たちと会えるの?」
「……郁也は、逢いたい?」
郁也はこっくりと頷いた。興味をひかれた。出来れば仲良くなりたいと。
「それじゃあ、キミがここに来るときは、私と宵はここにいるよ! 私たちも、キミとお話ししたい」
そう彼女らは笑った。待ち合わせはこの祠の前。いつ来てもいいよ、と無邪気に言われた。少し首を傾げながらも、郁也はそれを承諾した。
そこから、彼らの交流が始まった。時間があれば少年はこの山を登って祠までやってきたし、そうすれば必ず彼女らがいた。
朗らかに屈託なく笑う彼女と、優しく穏やかに笑う彼。どこか対照的でありながら、それでもやはり揃えのような彼女らと、郁也がその精神の距離を詰めるにはさして時間を必要としなかった。
「郁也、がっこうはどうしたの?」
「今日は土曜日だからお休み。一日ふたりと一緒に遊べるよ」
郁也の言葉に万歳をして喜ぶ陽菜に、郁也も心の中がポカポカする気がした。その花の咲きほころぶような笑顔が、郁也は好きだった。
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