【 雨宿り 】

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【 雨宿り 】

 しばらくすると、本格的な雨模様となってきた。  傘を持ち合わせてない僕は、髪も服も濡れてしまい、しなしなと朝の元気が失われてゆく。  仕方なく、自分も雨宿りできるところへと立ち上がり走った。  しばらく走って行くと、道路の向かい側に小さな店舗が見えてきた。  その店舗の屋根に二人ほど雨宿りをしている。  雨も酷くなってきたので、とりあえず、僕もそこへ。 「ふぅ~、朝の天気予想、相変わらず当たらないなぁ~」  そんな独り言を言いながら、体中に付いた雨粒をパンパンと手で払い除ける。  ふとその店舗の大きなガラス窓を見ると、綺麗な色の光がチラリと覗いた。  僕は何かに吸い寄せられるように、自然と体がそのお店の中へと入って行く。  入口のガラス扉を開けて、店内を見渡すと、そこには美しく、どこか懐かしい光景が目に飛び込んできた。  青、緑、ピンク、紫。  その深く色鮮やかな芸術品たちが、プクプクと小さな音を立てながら僕を迎えてくれる。  その中の一つに、僕は目を奪われた……。 「何かお探しですか?」  眼鏡をかけた白髪交じりの髭を生やした店主らしき人が、僕に声をかけてきた。 「これ、綺麗だなと……。あっ、これ下さい……」  それを指さしながら、思わずそんな言葉が、不思議と僕の口から自然に漏れていた。
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