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【 和金ちゃん 】
僕はベッドの上にうつ伏せになり、枕に顔を埋めて彼女の名前を呼ぶ。
「和金ちゃん……」
「なあに?」
あれ? 僕はもう寝ちゃったのか? 秒で夢の中に入っちゃったみたいだ。
何かあの時のように、どこか懐かしい声が聞こえてくる。
でも、少し彼女よりも声が幼いか……。
「僕は君が好きなんだ……」
「私も空くんのことが好きだよ」
夢の中はいいな。
こんな妄想のような夢を見るなんて、今日はとてもついている。
どうせ夢なんだから、こんなことも思い切って言ってみるか。
「僕は和金ちゃんとチューしたい……」
「えっ……? わ、私も空くんとだったら……、いいよ……」
今日はなんて理想的な夢を見るんだろう。
よし、夢の中でもいいから、和金ちゃんを見てやろう。
体を仰向けにし、瞼をゆっくりと開いた。
すると……。
霞んでいた視界が徐々にクリアになってくる。
でも、なぜだかピントが合わない。
目の前に、何かとても近くに障害物があるようだ。
白に近い肌色に、栗色の潤んだものが二つ目の前、数センチの距離に。
その二つの丸く潤んだものが閉じられると、僕の唇に何かやわらかいものが触れた……。
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