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獣人アルファと、運命の姫巫女
思えば僕は、生まれた時から運が悪かった。
遠足や家族旅行といった、僕が楽しみにしている予定がある日は決まって雨。
なのに大っ嫌いな運動会や球技大会はいつも、腹立たしいまでの晴天で。
大学受験当日は大雪が降り、電車が大幅に遅延しているのは事前に分かっていたからかなり余裕目に家を出た。
しかし予定を変更して乗ったバスのタイヤがパンクするなどという、サイアクなアクシデントまで発生して。
……あの時はホント、これで全部終わったなと思った。
だけどなんとかギリギリ間に合い、試験には無事合格。
そして迎えた、入学式当日。
信号無視して道路に飛び出して来たトラックにはねられ、命を落とした。
そのはずだった。
……なのに気付くと僕は、ウサギみたいな長く大きな耳を頭に着け、コスプレをした美麗な男に囲まれて、やたらと豪華な天蓋付きのベッドの上に、何故か横たえられていた。
***
「姫巫女様が、目を覚まされたぞ!」
「獅子王様は、まだ戻られぬのか!?
あぁ、もう!こんな、重大な時に……」
僕が目を開けると、彼らはざわざわと何やら話し始めた。
どうやら僕の事を話しているようなのだが、その内容はいまいちピンと来ない。
……確実に誰か、別の人と間違えられている。
だって僕は『巫女』ではないし、男だから『姫』であるはずもないのだから。
よくよく見てみると、彼らの頭部にある長い耳は、感情に合わせるみたいにしてピコピコと動いている。
これって、もしかして。……本物の耳!?
一番身近にいた、最も若そうな青年の耳に、こっそり手を伸ばしてみる。
するとそれは突然触れられたせいで、驚いた拍子にピンと天井に向かい真っ直ぐに伸びた。
だからつまりこのウサ耳は、血の通った本物の耳であるという事なのだろう。
それを見て、あまりにも奇妙な状況だというのに、僕はあっさり事態を飲み込んだ。
なるほどな。やはり僕は、死んでしまったのだ。
だからここはきっと、この世ならざる場所。
……天国か、どこかなのだろうと。
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