2.escape

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紅い血が滲むSEXに身を任せ互いの体を貪り合った夜、不意に零された雪刹の本音に弘一は同意した。  「浚って行けばいい。どこへだって、お前と一緒なら構わない」  強く抱き合って思いを確認し合ったあの夜から弘一の頭の中にその話がずっと残っていた。  思い掛けないタイミングで謹慎を喰らった足でアメリカに居る雪刹の元へと旅立った時、大胆過ぎる行動に自分自身驚いた。  何も考えたくなくて、目の前の現実から目をそらしたくて柄にも無くはしゃいでいたあの時とは心境は違っていた。  雪刹と過ごす時間を大切にしたいと思ったのだ。出来ることなら少しでも一緒に居る時間を増やしたい、と。  お互いの立場上、時間を合わせることが難しいのはよく分かっていたがそう言い訳してすれ違いが当たり前だと思うことがダメなのだと気が付いた。  いつものように遅い雪刹の帰りを待ち、躊躇いがちに言ってみた。  「二人でどこか旅行に行かないか?1週間か、2週間か…」  「そんなに休めるんですか?」  「もぎ取る」  即答する弘一に雪刹は笑って頷いた。  「じゃぁ、私ももぎ取りますね」  行き先は特に話し合わなかったが雪刹が出してきたのはドイツのパンフレットだった。  大きな観光地があるワケではないですがのんびりするのには良いと思うんです。  何も言わずとも自分の意図を察してくれる雪刹に弘一はただ笑って頷いた。  長い空の旅を終えて辿り着いた地は煌びやかさや喧騒とは無縁だったがその静けさを弘一はすぐに気に入った。
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