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PROLOGUE
「爆破予告ですか?」
『ええ。今からそちらに予告状の写真をお送りしますので、少々お待ちを』
「お願いします」
電話口にそう告げた中年の白人男性は、スリープモードにしていたパソコンをワンクリックで目覚めさせ、メールサーバーを開く。
ほどなくして、新着メール1件。
「……なるほど。しかしなぜ学校が標的なのでしょう」
『私が聞きたいくらいですよ、ミスターD。なんでよりによってうちの孫娘が通っている学校を! あぁもう私、心配で心配で』
「わかります」
ミスターDと呼ばれた男は、本当に心からそう思っている様子で目を細め、低い声で依頼主のご老人にそう答えた。
「失礼ですが、誰かに恨まれるようなお心当たりは?」
『いえね。私も仕事柄いろいろと恨みは買いますけど、どうやら犯人の目的は人の命を奪うことではないようなのですよ』
「と言いますと?」
『爆破予告されている十月十二日は土曜日でしょう? 学生を狙うなら、平日に爆破しそうなものだと思いませんか?』
「土曜日に部活動をしている、ある特定の生徒を狙っている可能性は?」
『それもありませんね』
「なぜ」
『その日は体育祭なんです。いやぁ孫がリレー選手に選ばれるかもしれないと言うんで、私も応援に行こうかと思ってるんですけどね。……それはともかく、体育祭は毎年近くの競技場を貸し切って行っているそうで、ちょうどその日だけは、部活の練習をする生徒も教員も校舎に来ないわけです』
「興味深い」
『最初は単なるいたずらかとも思ったんですが、ここ最近、都内で不審な爆発騒ぎが多発していまして。犯人の目途も立っていないものですから。警察沙汰にするのは簡単ですが、できれば内密に解決していただきたい』
「警察と医者と弁護士は、いつの世も風当たりが強いものです」
電話の向こうの老人が、かっかっと笑う。
『おっしゃる通りですな。まぁ私としては、孫の晴れ舞台をつまらん事件で邪魔したくないだけなんですけどね』
「そちらが本命でしたか」
『お願いできますかな?』
そう尋ねられると、白人男性はニイッと口角に自信を浮かべる。わずか一呼吸の間に、鉄をも貫くような鋭い目つきになり、
「――スパイ一家ミラージュにお任せあれ」
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