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それにしても、童顔なのに、新聞とブラックコーヒーを携えているなんて、何だかミスマッチ。長い睫毛を落とし、何をそんなに熟読しているのだろう。社会人だから、常に勉強していなきゃいけないのかな、私が英単語帳を常に携帯しているように。
新聞、だなんてオヤジだなあ、と思う。ニュースなんてパソコンとか、それこそスマホで読めるのに。
浅岡さんは時代錯誤だなあ、と私は息を漏らし、窓の外に目を向けた。
休日でも、私と同じように制服姿で、キャッキャッとはしゃぎながら通り過ぎる女子高生の群れが目に入ってきた。それから、おデブでTシャツ一枚姿の、耳にイヤホンを入れながらニヤニヤ歩く男のひと。立ち止まったまま、お喋りに華を咲かせているおばちゃん集団。
そして、何組もの恋人同士の往来を目にした。
私と浅岡さんは、傍から見たらカップルに見えるかな、と、もう一度思った。
私と浅岡さんは恋人同士ではない。ただの吹奏楽部員と、そのOBに過ぎないのだけれど、他人から見たら兄妹に見えるのか、はたまた援助交際に見えるのか、気になるところだ。
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