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「弟の遺品である本から、彼女の心変わりを疑うような言葉も見つかりましたが、恐らく、巻き込むまいとして去ったのだと、周りの人達も考えていたようです。
心変わりでも構わない。ただ、弟の死を伝えたい。
同時に僕の事情もあります。
弟と親しかった人達から、主義者に弟のことは知られていようから、似ている僕が巻き込まれるのではないかと心配されています。
結婚を考えていますので、相手の家族を巻き込むようなことがあってはなるまいと、調べているのも事実なのです」
森本は大きく溜息を吐くと、思い出したようにサンドウィッチを頬張り出した。さっきのお上品な食べ方とは違って、怒りを噛み砕いているような風に見えた。
紅茶を流し込むと、きつく目を閉じ、私は……と、声を絞り出した。
「彼女が既婚者であろうと、恋人がいようと主義者であろうと構わない。今の私が持つ全てを失っても構わない。
彼女が欲しいのだ! 彼女と一緒に居たいのだ!」
本当に少年のようだと思った。後先構わぬ感情だけの恋愛。
相手の女が自分には欠片の感情も持っていないと自覚していながら、どうしてそれほど熱く想えるのか。
「君を信頼している」
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