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森本は名刺を取り出すと、洋史の手元に滑らせた。
「彼女のことが分かったら、電話なり手紙なりで教えて貰いたい」
肩書を見ると、様々な業種の会社名が並んでいる。資産家なのだろう。仕事をする必要のなさそうな役職名が名刺を彩っていた。
しかし、何故森本に蕗子は関わったのだろうか?
運動資金を引き出す為ならば、金の無心をしないのはおかしいし、自分との関りをネタに脅迫するわけでもない。
念の為に聞くと、二人が出会ったカフェは森本の家の近くにある高級店であった。
森本は、予定があるからと出て行った。この部屋は五時まで借りているから、それまで自由に使ってくれて構わない。自分につけてくれるから、好きな物を召し上がってくれればいい。と言い残して。
窓を開けると、気持ちの良い風が入って来た。静かな環境は、考え事をするには持って来いである。
名刺を確認する。住所は屋敷町の一角。記憶を紐解くと、堀川伯爵家が近所にある。
カフェには行ったことはないが、ニ三度馨の奢りで入った事のある平助から聞いたのは、珈琲など『ミモザ』の十倍近くし、当然ながら金持ちを相手にしている店なのだとか。
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