シュー・ア・ラ・クレーム

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 もしかしたら目的は森本ではなく、無差別に金持ちを狙っていたのかもしれない。  しかし、何の為? 脅迫もなく、無心もせず、何の為に金持ちを誘惑するのか?  写真を見る。美しい高島洋子が存在した。  しかし、その明るい笑顔は、あの日見た雪女の表情とは真逆であった。確かに顔は同じなのに、表情は別人のようである。  もしかしたら。と考える。二人は別人ではないのか。と。顔だけを見れば、確かに同一人物であるが、気になることが一つだけあった。  ここで見た女には、華があった。美しいだけではなく、華が人の目を奪っていた。  美しくとも華に欠け、女優として成功できなかったはずの洋子が、あれほどの華を持っていようかと、今になって疑問が頭をもたげる。  似た顔に化粧を施せば、もう一人同じ人間が作り出せるのではないのか?  自分の考えに反論する自分が存在した。  なんの為に? 洋子が存在すると広める為に? 何故?  「もしかして彼女は最早、この世には……」  何らかの事情で洋子を殺めた犯人が、罪の発覚を遅らせる為にしている細工ではないのか?
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