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久しぶりに学校で一日過ごした。有紀の仕事が休みで、一日家から出ないと約束してくれたのだ。
一日家から出られないとなると可哀想な気もしたが、元々有紀は休みの日などは家の中で楽譜を読んだり、片付けなどをして過ごしているらしいので、本人はなんとも思っていない様子だった。
最近殆ど学校に足を踏み入れていない為、真面目な性格の洋史にしてみると不安に苛まれる日々ではあったのだった。
カフェには下校ついでに寄ることにして。
久しぶりに会う学友と、近々国立西洋美術館で行われる予定の美術展の話しをしている時、事務係の女性が洋史を呼びに来た。
落ち着いた様子であるが、表情は堅く、言葉も少なであった。
「どうしました?」
問いかけても周りに視線を巡らせ、人が存在すると気付くと、曖昧な様子で、えぇ、ちょっと。と繰り返す。どうやら人に聞かれない方がいい話だと気付き、洋史も口を閉じた。
連れて行かれたのは学長室であった。
「津川洋史を連れて参りました」
先ほどとは打って変わって、明瞭な声でそう伝えると、学長室に入るよう促し、女性は出て行ってしまった。
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