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部屋の中にいたのは、滅多に見る機会の無い学長と、細身の若い男と、年配の男。
「お呼び立てしてしまい、申し訳ありません」
二人は刑事だった。笑ってはいるが、隙の無い目をしている。
「なにか……」
「小柴藤次さんをご存知ですね?」
ドキリとした。藤次が何をしたのか? 刑事が出て来たのであるからには、大きな問題を起こした可能性がある。
「はい、昨日も会いました」
「昨日の夜九時から十二時の間、どちらで何をしてました?」
洋史の、昨日会ったとの言葉に興味を示さなかったのはつまり、知っているのだろう。
「九時から十二時……。
九時頃、小柴さんのお宅を出て、下宿に戻りました。
直ぐに風呂屋に行って、戻ったのは十時半頃だったでしょうか。その後は部屋でずっと絵を描いていました」
刑事は帳面に書きつけると、真剣な目で洋史を見た。
「十時半からはお一人だったわけですね?」
「はい、一人暮らしですから。
何が起きたのでしょう?」
何となく、予感はしていた。刑事達の表情が硬く、洋史を見る目が厳しいのは、ことが簡単な問題ではないと物語っていたのだ。
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