欲望

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 いつの間に眠ったのだろうか。山の端が白み始めてきたまでは覚えている。  明るくなったことで気が抜けたのだろうか。  時計を見ればまだ八時。  寝不足の目を擦りながら茶の間に行くと、やはり寝間着姿の洋史がいた。  直通の母親梅子(うめこ)と、まるで親子のように親しく話し合っている。  どうやら洋史は、江戸っ子らしいさっぱりとした気性の梅子と気が合うらしい。  直通からしてみると、洋史の母親桃子(ももこ)の大人しさを好ましく思っているのだから、皮肉なものだ。  洋史と直通は同い年の従兄弟であるが、兄弟と言っても差し支えのない関係であった。  二人の父親は、双子の兄弟である。そればかりか、母親は年子の姉妹なのだ。  父親の実家は代々医者を生業にしている。  父親の(さとし)も医者の勉強はしたが、結婚を機に妻の実家の和菓子屋の主となった。
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