クローバーはふわりと嗤う

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「では」  賑わう店内、6人テーブルに案内された俺ら5人は、全員が赤らんだ顔のまま向かい合って体勢を崩していた。章子(しょうこ)が全員の顔を笑顔で見渡した後の一拍の空白。わざとらしく様子を伺ったその後に続く掛け声を合図に、それぞれが頼んでいた酒を高く掲げた。俺も、ゆるんだ頭のまま、頼んでいた生ビールを掲げさっきまで楽しんでいた同窓会の延長を楽しむ。 「拓斗(たくと)、幹事お疲れ様〜!」 「いやあ、助かったよ皆が色々サポートしてくれたし、本当ありがとな」  この場で一番酔っている章子がテーブルに頬杖を突きながら拓斗を労る。照れくさそうに話す拓斗は、ぐい、と生ビールを空にしてからまた話を続けた。 「いや本当にさ……良い仲間を持ったよ俺は……な?優太(ゆうた)健志(けんし)」  突然振られた話に、つまみのだし巻き玉子を切る手が止まる。 「えっ、俺?あんまり恥ずかしいこと言わすなって。それに俺、今回はあんまり運営には関わってないし。拓斗たちのおかげだよ。な、健志」  俺は一番の親友の健志に後を任せた。 「いや、俺ほとんどなんもしてねえし。優太も急に振ってくんなって」  笑いに包まれるテーブル。手にした枝豆を口に運ぶタイミングすら分からないくらい、笑い合う。 「まあ確かに?しっかりサポートした私と、拓斗と由依(ゆい)の伝説カップルのおかげ、かもね〜」 「え、伝説カップルってなに?」 「え〜知らないとは言わせないよ〜?何があっても別れない北高不動の伝説カップルって言われてたじゃん」  驚く由依に章子がおちゃらけながら昔校内で話題だった噂を話す。由依の恋人の拓斗はポリポリとこめかみを掻きながら照笑っていた。こいつはずっとこういうやつだった。全てを受けいれ、優しく包む。伝説カップルと呼ばれるまで続いている交際も互いの力があったとはいえ健志の力も大きいのではないだろうか。 「伝説カップルが〜ここまで〜付き合ってこれは秘訣は何ですかっ」  相変わらず章子は噂好きで、お喋り好きで。そんな章子に合わせるように店内はどこか安心するほどに賑やかだった。俺はこの場の雰囲気に心を撫でられるような落ち着いた気分で生ビールを口にする。そんな中でもシュワシュワと弾ける炭酸の泡が、苦味が、頭に引っかかるひとつのことを思い出させた。それでも決して口にはしないまま。
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