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五月、汗ばむ陽気だった。都内の住宅街を
Mayと二人で歩いた。
私は、挨拶のお菓子を持っていた。
赤坂とらやの栗羊羮。
[ こちらだよ。]
Mayが言った。
小さな古い家。庭には池がある。色々な花。
へちまも、ぶらさがっている。
私たちが見ていると、玄関から、神山先生の
奥様らしき方が、出てこられた。
[ 高岡健一さんね。]
[ はい。高岡健一と申します。]
奥様は私を見つめた。優しい瞳だった。
[ 私は、西条瑠璃と申します。]
奥様は、長い睫毛に縁どられた、ぱっちりとした目をしていらした。
貝紫染めらしい、花模様の着物を着ていらっしゃる。
肌は、艶々している。私は、思わず見とれた。かなりの、ご年齢のはずなのに。
奥様も、微笑みながら私を見つめた。
[ さぁ。お上がりになって。]
[ お邪魔致します。]
玄関を開けると、爽やかな風が吹き抜けた。
[ やぁ。いらっしゃい。]
神山先生と見られる方が、いらした。
背の高い、白髪の先生。脚を少し引きずっておられた。白っぽい着物を着ておられる。
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