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[ 主人が帰ってきたのは、昭和二十一年だっかしら? 私はもう、主人は帰らないと諦めていました。
でも、帰って来てくれたんです。昨日のことのように思えます。
主人は、杖をついていました。私は駆け寄って、抱きつきました。
帰って来てくれたのね。泣きながら言いました。二人で泣いたのを覚えています。]
奥様は泣きながらおっしゃった。
[ 私は役立たずです。友人たちは、敵の戦艦に当たって沈めました。でも私は、、。
私は帰って来ても、少しも嬉しくなかった。
メチルアルコールを飲んでは、荒れていました。
恥晒しだと、役立たずだと、自分を嘲りました。ろくでなしだと、、不自由になった体が
憎かったんです。
そんな時、家内が、まだ少女のような家内が
こう言いました。
“ あなたのどこが、ろくでなしですか?
あなたの体は変わっても、心は変わって
いないわ。私を愛してくださっているで
しょう?
私は嬉しいわ。こうして、あなたと抱き
締め合える。
こういう日が来るのを、祈っていたの ”
そう言いました。]
[ 主人を愛していくことは、私にしかできないことだと思いました。愛は変わらなかったんです。]
奥様は、涙を拭きながらおっしゃった。
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