18人が本棚に入れています
本棚に追加
[ 主人と出会ったのは、帝大の赤門の前なんです。私が、本を落としてしまった時。
“ 大丈夫ですか? ”
そう言って、本を渡してくれたんです。
私は、主人に見惚れました。イケメンでしたから。
主人も、私をじっと見つめました。
私は、恥ずかしくて “ ありがとうございます ” そう言うのがやっとでした。
あれは、昭和十四年位だと思います。米英との戦争が始まると言う、噂。
理科の学生と違って、文科の学生は徴兵されると、、。
私は、清水の舞台から、飛び降りるつもりで
主人の名前を訊きました。
あの頃は、女性の方から名前を訊くなんて
はしたないようなこと、だったんです。
するとね、主人は
“ 僕は、あなたの御名前も、お宅も知っています。僕、あなたをお見かけしたのは、これで三度目です。あなたは、僕達帝大生の憧れの、美少女なんです ”
そう言ったんです。]
奥様は、少し赤くなって、俯いておっしゃった。
最初のコメントを投稿しよう!