神山健一先生のお宅に

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[ 主人と出会ったのは、帝大の赤門の前なんです。私が、本を落としてしまった時。 “ 大丈夫ですか? ” そう言って、本を渡してくれたんです。 私は、主人に見惚れました。イケメンでしたから。 主人も、私をじっと見つめました。 私は、恥ずかしくて “ ありがとうございます ” そう言うのがやっとでした。 あれは、昭和十四年位だと思います。米英との戦争が始まると言う、噂。 理科の学生と違って、文科の学生は徴兵されると、、。 私は、清水の舞台から、飛び降りるつもりで 主人の名前を訊きました。 あの頃は、女性の方から名前を訊くなんて はしたないようなこと、だったんです。 するとね、主人は “ 僕は、あなたの御名前も、お宅も知っています。僕、あなたをお見かけしたのは、これで三度目です。あなたは、僕達帝大生の憧れの、美少女なんです ” そう言ったんです。] 奥様は、少し赤くなって、俯いておっしゃった。
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