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「本当、天国みたいな島だね……ここは」
「確かに、まだ帰りたくないよ」
「卓はあと4日も居られるんだよな。いいよなぁ……。俺も仕事辞めよっかなぁ……」
ここに卓がいないから、そんなことを冗談ぽく言ったのだろう。
何とも言えない微妙な雰囲気になってしまったので、日菜子は空気を変えるように急に立ち上がって、私と英里さんがいるキッチンへとやって来た。
今夜は、英里さんが島料理を準備してくれていて、ちょうどピーマカが出来上がったところだ。
「これは何?」
「ピーマカっていうんだよ。食べてみる?」
そう言って、味見用にスプーンで一口分だけ取って彼女の口元へと運ぶと、日菜子は躊躇うことなく口に含んで食べてくれる。
一瞬、驚いたように目を見開いたのは、予想外に美味しかったのだろう。
「このドレッシングって、お土産屋で買えるのかな?」
「スーパーで売っていると思うよ」
「やった。買って帰ろーっと」
無邪気に喜んでいるん日菜子の横顔をそっと窺いながら、及川君の昨日の言葉を思い出した。
日菜子が、卓のことを好きだったなんて、一度も疑ったことはなかった。
私は卓に好きだと言われて、自分の気持ちと向き合ってみて、彼と付き合ってみようと決めたけれど。
日菜子はもっと前から卓のことが好きで、それを私が奪ってしまったのかなって、そんなことを考えると申し訳ない気持ちになってしまうんだ……。
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