運命の子  理想的な家族2ー良子

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 カイトが子供二人を抱え、助手席に乗り込んできた。たちまちギュウギュウ詰めになる。  リョーコは車を発進させた。 「後ろの二人乗せていくのかよ」  カイトが眉を寄せて、文句を言った。  荷台にはマシンガンの男二人が倒れたまま、乗せられている。意識もなく、瀕死の状態だが、息はまだあった。 「村の外にトラックごと置いておいた方が、助かるかもしれないでしょ」  リョーコが軽い調子でそう言いながら、スピードを上げる。後ろではガコンガコンと重い物が跳ねるような音が聞こえた。  こっちの方が、死んじまうだろ。  カイトはそう思ったが、何も言わなかった。  要は、荷台から下ろすのが面倒だったのだろう。リョーコの足元には、やつらが持っていたマシンガンが見えた。 「……その子たち、何も見なかった?」  うってかわって、リョーコが気づかわしげにそう訊いてきた。 「ああ、離れていたからな。布をかぶせていたし、大丈夫だろ」  カイトが撃ったのは見たかもしれないが、 敵に当たったところは見えていないはずだ。そのくらいは離れていた。 「それでこの子たちをどうするつもりなんだよ」  結局、連れてきてしまった。まぁ、あそこに置いておくことは出来なかったにせよ、味方に報告しそびれている。 リョーコは何も言わない。このまま、本当に連れて行きそうである。  しばらくして、「フッ」とリョーコが笑った。 「わたしの子…わたしたちの子として育てる」  カイトは隣を見て、ため息をついた。  わたしたち。  二人の子どもは、リョーコと自分の間に挟まれていい子で座っている。目は開けているが、自分たちのことを話されているとは、分かっていないようだった。 「自己満?偽善?わたしの今の気持ちを、そんな言葉で台無しにしないで」  リョーコはカイトの方を見ていなかったが、その言葉はカイトを怯ませた。 「あの子たちを見つけたとき、これは運命だと思ったの」  口調は淡々としていたが、腹を立てているようにも聞こえた。 「ここにわたしたちが遅れてきたことすら、運命だと思った。それを下らない理由で、なかった事にはしないわ」  運命……俺は単に彼女に拾われた子どもたちに嫉妬しただけかもしれない。  仕方なく、別方向から攻めてみる。 「おまえ、もうすでに二人子どもがいるだろうが」 「だから?」 「俺たちのようなのは、そういう弱みを持っちゃいけないっていうのは、鉄則だぞ。増やしてどうするんだよ」 「そんなの、誰が決めたのよ」 「おまえを脅すための材料にされるっていうんだよ。大昔からの常識だろ。敵を屈服させるためには、敵の弱みを握るのが一番だってね」  同業者()ならまだしも、リョーコが選んだ相手は一般人だ。  リョーコは笑った。 「その時は、潔く原因(自分)がいなくなるよ」  そう言ったリョーコの目は、微塵も迷いがなかった。  厳かに言い放つ。 「今日からわたしが、この子たちの母親だ」
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