運命の子  理想的な家族2ー良子

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 一軒の家の前で、リョーコが足を止めた。  崩れかけた壁に嵌まっているドアは、歪んでしまって閉まりきらず、風でパタパタと揺れていた。  中に転がる二つの遺体が、ドアの隙間から見え隠れしていた。 「どうした?」  カイトが声をかけるが、リョーコはそれに答えないで、その家に足を向けた。  パタパタ音を鳴らしているドアに手をかけ、中に入った。  カイトはそれ以上何も訊かず、リョーコの後に続く。  家の中の遺体は、銃弾を浴びていた。  男女だ。この家に住んでいた夫婦だろうか。二人はお互いを庇うように腕を広げていたが、仰向けに倒れていた。正面から撃たれたのだろう。  硝煙の匂いが鼻についた。  カイトは黙って、銃を抜いた。  銃撃されてから、時間がたっていない。  彼らを殺した者たちはまだ、近くにいるのかもしれない。 リョーコはだが頓着せず、部屋の奥に進んでいった。遺体を避け、奥にあった戸棚の扉に手をかけた。  そっと扉を開けた。  その手つきが優しげだったのを、カイトは意外に思った。  思わず固唾を飲んで見守る。  そこには二人の幼子が(うずくま)っていた。  リョーコは黙って手を伸ばし、二人の呼気と脈を確かめていった。 「生きてるよ」  やっと息を吐いたように、そう呟いた。 「二人の子かな」  カイトが夫婦らしき遺体に目をやりながら言うと、リョーコは「たぶんね」とそっけなく返した。  俺たちが来たことで、二人の命は助かったわけだ。
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