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一瞬で、二人は黙った。それだけで、お互いに通じる。
手勢を増やし、奴らが戻って来たのだ。
もしかしたら、こちらが二人だけなのを、知られたかもしれない。
カイトがさっと北側に目をやる。
そこには人家らしきものは見えなかった。何かの工場跡か、作業場跡か、トタン屋根の建物が集まっていた。もちろん、もう機能している様子はない。どれもこれも斜めに倒れ掛かり、お互いがかろうじて支え合っているようにみえる。
エンジン音は西から聞こえた。こちらに向かっていて、リョーコたちが見つからなければ、そのまま東に向かって走っていくだろう。
今はまだ目を覚ましていないが、腕に抱いている子どもたちがいつ目を覚ますかも分からない。
リョーコは頷くと、北の工場跡に向かって走り出した。カイトも続く。
リョーコたちが建物の陰に隠れるのと、土煙を上げながら車が姿を現すのがほぼ同時だった。
中型のトラックだ。むき出しの荷台に、四人乗っている。二人はマシンガンを片手に目を血走らせていた。
トラックはリョーコたちの前を通り過ぎていった。
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