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「ヒー」
かすれた悲鳴のような声が聞こえて、リョーコとカイトは自分の腕の中を見た。
カイトが抱いている子どもの目が開いており、泣き声を上げている。ただ、弱っているのか、泣き声はかすれ、出すのがやっとといったところである。
リョーコが抱いている方の子どもの顔を覗くと、とっくに目が覚めていたようで、大きな目を見開いていた。ただ、声を出す様子は見られない。恐怖からか、そんな力も残っていないのかは分からなかったが。
「時間がないな」
敵のことか、子どものことか分からないことを呟いて、リョーコは自分が抱いていた子どもをカイトに押し付けた。
「子供たちを守って、援護しろ」
カイトが答える前に、リョーコは銃を取り出し、少し離れた場所のトタンを打ち抜いた。
もともと倒れそうだった小屋は、音をたててつぶれた。
たちまちトラックがUターンしてくるのが分かった。
トラックは崩れた小屋の前で止まると、マシンガンを持っていない二人が荷台から飛び降りた。手には銃を持っている。
マシンガンの二人は、荷台に乗ったまま、周囲を警戒している。
小屋の方に四人の意識が向けられている隙に、リョーコはするするとトラックに近づいた。
カイトが撃った弾がマシンガンの一人を撃ち抜いたのと、リョーコがトラックの下から滑り出して、地上に降りていた二人の男を制圧したのは、ほぼ同時だった。残ったマシンガンの男が、焦ってリョーコに向けて撃ったので、リョーコに倒されて伸びていた男二人は、銃弾を浴びてしまった。
当のリョーコは、横に跳びながら、男の一人から掠め取った銃で、荷台の男を撃った。弾が男の肩に当たり、よろめいたところで、逆方向から飛んできた弾に、男は胸を撃ち抜かれた。
最後の男が倒れたのを見届けたリョーコは、そのままスタスタと運転席に近づいて、運転席に座って縮こまっていた男に銃を突きつけた。
「さ、降りて」
転がり降りてきた男は、まだ十代と言ってもいい若い男だった。本当に運転するだけの役割なようで、ざっと見たところ空手だった。
リョーコが男に背を向けて、運転席に乗り込んだ時、「パンッ」という銃声と「ウッ」と呻く声が聞こえた。
チラリと振り返ると、若い男は右手を抑えていた。地面にはナイフが落ちていた。
リョーコは何もなかったように、トラックをバックさせ、カイトたちが隠れる小屋の前に着けた。
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