それまでの僕たち

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それまでの僕たち

 それから僕たちは週に一度、大学の講義がない土曜日か日曜日に決まってデートするようになった。  場所はその時々によって違うが、この三年で定番デートスポットと呼ばれる場所には行き尽くしたと思う。映画館、水族館、プラネタリウム、動物園、公立の公園、美術館、夜景の綺麗なレストラン……。「雑誌でデートスポットの特集を組むから手伝ってくれ」と言われたら、かなり役に立てると思う。  大学が長期休暇に入ると泊まり掛けの遠出もした。  付き合って最初の遠出は一年生の夏休みで、場所は某・超有名避暑地だった。大きなトランクケースを持って初めて二人きりで新幹線に乗った。出発前に二人で念入りに計画を立てたから駅で迷わなかったし、ホテルの予約だって完璧だった。  しかし、巨大アウトレットモールに行ったとき、僕たちは計画以上にはしゃぎすぎてしまった。オープンから気になるショップに片っ端から入って紙袋を順調に増やした。魅力的な店舗が多いことも理由の一つだと思うが、何より僕たちは初めての遠出ということでテンションがあまりに高すぎた。 「うわ、持って帰れるかな」  ホテルの部屋に戻って大量の紙袋を床に置いたとき、ノノが腕を組んで渋い顔をした。  紙袋の数を冷静に数えてみると、二十ほどになっていたのだ。いわゆる爆買い、である。  翌日帰ることになっていたのだが、それは大変だった。トランクケースに数袋は入れたが、当然全部は入らず、十五近い紙袋を両手に持って移動することになったのである。幸いにもその日は新幹線に乗って帰るだけの予定だったが、二人してまるで学期末の小学生みたいだった。  その事件があってから、僕たちの間には「旅行したときのお土産はトランクケースに入る分だけ」という暗黙のルールができた。そして、そのルールは未だに破られていない。  そんな風に順風満帆に過ごしてきたが、あるとき僕たちの関係を揺るがす事件が起きた。
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