81人が本棚に入れています
本棚に追加
【11話】帰宅途中
ノートの隣に置いていた携帯にMINEの通知が来る。
見ると[今終わった〜]と翔太からだった。
[お疲れ様、門前でいい?]と送信してすぐに[OK!]と返事が来たので烏間に伝えて二人で図書室から移動した。
下駄箱に向かいながら歩いている時、
「家の方は大丈夫なの?」と、心配そうに烏間が聞いてきたので「大丈夫。一応、置き手紙はしたから」と俺は頷く。まあ、きっと破かれるかゴミとして捨てられるけど·····。
烏間は「そっか·····」と、何処か悲しそうな表情をしていた。
健康診断以降二人っきりの時は家の事情を気にしてくれて、俺にとって烏間は唯一の理解者で···息抜きさせてくれる存在となった。まあ、さっきみたいに変な所もあるけど、、、、
でも··········本当に烏間が居て俺は助かってる。
「烏間···ありがとう」
俺は小声でお礼を言う。
「えっ?何?」
烏間は聞き取れなかった様で、なんて言ったのかを聞き返されたが「んー?皆で勉強会楽しみだねって」っと俺ははぐらかし「そうだね」と、烏間は笑顔で頷く。
二人で談笑しながら歩いていると翔太との待ち合わせ場所である校門に辿り着いた。
「翔太早くこないかなぁ」
「だね、バレー部っぽい奴がちらほら帰ってるから、そろそろ来ると思うよ」
そんな話しをしていると「待たせたなっ」と、翔太が此方に向かって走って来た。
部活でクタクタだろうに何でこんなに元気なのか不思議だ。
「お疲れ」
「あんがとー!じゃ、行こうぜ〜っ」
駅に向かって三人で歩き始め、途中のコンビニで今から食べるお菓子を買おうという話になり近くのコンビニへ入った。
各々商品棚を見て、スナック菓子やチョコレート等たくさん買う。
「じゃあ、行くかぁ〜」と翔太が言った時、
俺は好きな作家の小説の新刊の事を思い出す。
「ごめんっ!!俺、欲しい本があって·····本屋寄ってもいい?」
二人にお願いすると、
「俺はいいよ」
「俺も漫画気になるからOK〜」と言ってくれて、お礼を伝えた後三人でコンビニから本屋へ移動する。
◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇
「あれ?無いなぁ·····」
駅前のビルの中にある本屋さんに寄り、欲しかった小説の新刊を探していた。
翔太は小説に興味がないとの事で、
「俺、あっちの漫画コーナーにいるから〜」と行ってしまい、烏間はというと近くの小説の棚を見ているようだ。
う〜ん、この辺りの筈なんだけど、、、
検索結果の小さな紙を見ながら考える。
在庫は[有]となっているのに、お目当ての本はなかなか見当たらない··········。
先に誰かが購入したのかな?
それとも俺が見ている棚が違う???
「あった?」
烏間が隣に来て尋ねてくる。
「ううん、見当たらなくて、、」
「蒼、その紙貸して?」
「あ、うん」
俺は烏間に言われるままに検索結果の紙を渡す。
「·························あー、これじゃない?」
そう言いながら棚から一冊の本を取り出した。
「あ!!」と、俺は思わず声が出る。
「烏間ありがとう!コレだよっ」
あった事が凄く嬉しくてお礼を伝えると、
「ん。」と烏間は短い返事をしつつ本を渡してくれた。
「俺、会計して来るから翔太と合流しといて」
「わかった」
返事を聞いて俺は早歩きでレジに向かう。
会計がスムーズに終わり、翔太と烏間がいる漫画コーナーへ向かったが二人が見当たらない。
あれ?
翔太だけならフラフラと何処かに移動してても変では無いけど、烏間も一緒だからそれは有り得ない。
「何処行ったんだろ」
仕方が無いので他のコーナーの資格や園芸、趣味、ファッションなどを見て行くが、二人を見つける事が出来なかった。
MINEに通知が来てるかも·····と、確認してみたけど何も来て無くて困った。
「うーん·····」
メッセージ送っても既読付かないし電話も出ない。
心配になった俺はもう一度本屋全体を見ようとした時·····エスカレーター付近で二人らしき人物を発見する。
しかし、二人だけでは無く周りには女子高生達の姿があった。
···············あれは翔太と烏間だよね?
取り敢えず二人?らしき人物の方へ向かって行くと、
二人が此方に気付き翔太は困った表情を浮かべ、烏間はかなり機嫌が悪そうだった。
「翔太!烏間!」
「ごめんな、探させたよなぁ」
「ごめん。かなりしつこくて·····」
二人共申し訳なさそうに俺に謝ってくる。
それにしても·····しつこい、って?
「二人の知り合いですかぁ〜?」
「!」
近くに居た女子高生の一人が話し掛けてきたので「あ、はい」と、反射的に答えてしまった。
「なんか···かっこいいより可愛い系じゃない?」と、他のメンバーも話し始める。
「ちっちゃくて可愛い〜」
「わかるぅ」
「······························。」
初対面に小さいって·····失礼な人達だな、、、
どうやら俺の外見の事を話しているようで、不愉快な気分になる。
「二人にも誘ったんですけどぉ〜、皆で今から何処か行きませんか?」
その内の一人が烏間の腕に胸を押し付けて身体をくっつけながら言う。
「チッ」
烏間は嫌そうな顔で舌打ちをして振り払うが、また直ぐに密着されての·····その繰り返しだ。
··········あ、、、なんか·····やだ·····あれ??
烏間と女子高生のやり取りを見て何故かモヤモヤしてしまう。。。
なんでだろ?
烏間が嫌がってる事をあの子がしているから??
自分自身の事なのに分からない·····。
「ごめんなっ!俺達今から三人で勉強するからさ」
翔太が横から断りを入れる。
しかし、、、
「え〜〜〜、勉強なんて後でイイじゃん」と、一人が言うと「それよりゲーセン、ボーリング、カラオケどこ行く?」「○○予約するう?」「××も良くな〜い?」「マミも誘ちゃう?」·····など翔太が断った筈なのに話が勝手に進んで行く。
「とりあえず此処降りよぉ〜」
そう言って女子高生の一人が突然俺の腕を掴んで勢いよく引っ張り「えっ?!ちょ、ちょっと·····」と、俺はバランスを崩して後ろに倒れる。
あっ·····ヤバッ⎯⎯⎯⎯⎯⎯···
このままだと近くにあった椅子の角にぶつかる·····。
「あっ、蒼!?」
翔太が驚く声が聞こえ俺は目をぎゅっと瞑った。
「·············································。」
「······························。」
········あれ?
直ぐに来ると思った痛みはこず、代わりに何か·····暖かいものに埋まっていた。
なんだろ?
瞑った目を開けて上を見ると烏間の腕の中に自分がいる状態だった。
「か、、烏間?!」
驚く俺を強く抱き締めながら烏間は「お前らさぁ、勝手に話進めんなよ。行かねぇってさっきから言ってるだろ」と、口を開く。
刺すような目が女子高生達に向けられ、俺や翔太でさえ聞いた事のない·····低く怒りがこもった声。
女子高生達も烏間の言葉に話すのを辞め、急いでその場から退散した。
「蒼、大丈夫?」
抱き締めていた烏間が俺の肩を掴みながら心配そうに聞く。
先程の怒っていた声が嘘のようだ。
「う、うん·····ありがとう」
「流石、烏間。蒼の事になると怖いなぁ」
翔太の言葉に対して烏間が翔太を睨むが、直ぐ此方に視線を戻して肩を掴んでいた手を離す。
「何も無くて本当に良かった」
「烏間·········」
烏間の目を見ていると「二人共、ジャマして悪いんだけど、そろそろ行こーぜ?」と翔太がニヤニヤしながら言う。
「あっ!、うん」
翔太の声で俺は視線を烏間から変えて、エスカレーターへ乗った。
「·············································。」
さっきの·····烏間と女子高生の光景が俺の中でまだ残ってて、何故かモヤモヤが消えてくれない。
助けて貰ったのに···最低だ。
このモヤモヤした感情は何なのかわからず、早く消えれば良いのに·····と思う。
最初のコメントを投稿しよう!