【序章】入学式

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【序章】入学式

閲覧頂きありがとうございます! 不定期更新ですが頑張ります(*^^*) 本棚やスタンプ等頂けると向上心に繋がるので、良ければ宜しくお願い致しますm(*_ _)m ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 「はぁ····················」 俺、飯島(いいじま) (あお)にとって、今日も憂鬱な日です。 少し違うのは『入学式』という「イベント」というだけ··········。 テレビのニュースでも入学式を報じて、世間様もそれ一色のお祝いムードだ。 「準備しないと」 テレビを見つつ対面キッチンへ歩いて行き、自身で朝食を作り始める。 IHにフライパンを置き、電源を入れて少ししてから油をひいて卵を割り、途中で水を入れて蓋をする。 卵焼きを待ってる間にトースターへ八枚切りのパンを一枚入れタイマーをセット。 「よし!」 直ぐにケトルに水を入れてスイッチを押して朝食の準備は完了した。 ジュ〜と目玉焼きが焼ける美味しそうな音が聴こえ、トースターからは[チンッ]と焼きあがった合図の音が鳴る。 「あちちちちっ、」 焼けたパンをお皿に置いてフライパンの火を止め、パンの上に目玉焼きを乗せた。 うん、今日も良い香り! 今の俺にとって、ご飯を食べる時間が一番心が安らぐ。 今日は────、、、 よし!ダージリンティーにしようかな。 ポットにダージリンティーの茶葉を入れる。 テレビが見える机にカップを置き、ボコボコと沸いた熱湯を茶葉の入ったポットにいれて近くにある砂時計を逆さまにして数分待つ。 砂時計が落ち終わり机には先程準備したポットや目玉焼きが乗ったパン、そしてカップが置かれた状態になった。 「あ、サラダ」 慌てて冷蔵庫から昨日の夜作っておいたサラダを取り出す。 「いただきます」 静かなリビングで自分だけの声が響く·····。 もぅ、慣れたけどね、、、 パンを黙々と食べる。 家族は現在·····父親と俺、弟の三人で母さんは逃げた。 俺は『父親』と呼びたくないので、普段は『あの人』と呼んでいる。 勿論、本人にはそんな呼び方をしないけど、、、 あの人は·····出来の良い二つ下の弟を可愛がり、何でもかんでも俺と弟を比べては、俺を罵り暴力を振るう。 そんな生活が小さい頃からずっとだ。 ·····小学生の頃はあの人に認めて欲しくて自分の事も見て欲しいから色々頑張りはしたが、中学に上がる時にはいい加減諦めに辿り着いた。 無駄だとやっと気付いたからだ。 「ごちそうさまでした」 食べた食器をさっさと片付けて入学式へ向かう準備をする。 筆記用具と書類、財布が入ったリュックを背負い、靴を履いて玄関ドアの取手に手をかけるが、何故かふぃに俺は後ろを見た。でも、そこには誰も居ない。 家族に見送られた記憶は一度も無いのに、、、 「···············行ってきます」 返ってくる事は無いけど、それでも一応俺は言う。 ◇┈┈┈┈◇ 電車に乗り空いてる席へ座った。 ポケットからイヤホン取り出して耳へ装着し、好きなアーティストの曲を聴き始める。 このイヤホンや紅茶の茶葉等は家を出た母さんが三ヶ月に一回位の頻度であの人に黙って俺と会う。 その時にお小遣いと一緒にくれる有難い物だ。 今から向かう高校は男子校で偏差値六十の私立高校·····家から片道110分とかなり遠い都会の学校で、中学の知り合いや友達が言うには、この学校は格差やイジメが酷く同性愛·····いわゆるゲイもいるらしい。 因みに俺は家は金持ちでも無いし、彼女いない歴=年齢で初恋もまだ。 家にはなるべく居たくないし遠い方が俺は都合が良い。 窓の景色をぼーっと見ていた。 景色は田んぼや畑から、家やマンションが多くなり·····ビルも徐々に増えていく、、、 春だということもあって所々で桜が満開で綺麗に咲き誇っている。 本当に綺麗だなぁ·········· そんな綺麗な桜を見ながら今日の始業式を頑張ろうと思う。 駅のホームへ降り、目的地である学校まで歩き始めた。あまり地元からここまで来た事は無かったケド·····さすが都会だ。 大勢の人が行き交う姿が目に映り、慣れてないからか人酔いしそう、、、、 コンビニやカラオケ、飲食店も沢山あって·····三年間で回れるのか?と想像し考えてしまう。 周りの景色を堪能していると、いつの間にか学校へ到着してしまい、俺は少し残念に思いつつ門をくぐる。 門では先生が立っており体育館へ向かうように言っていた。 ⎯⎯⎯⎯⎯⎯·····やっぱり、凄いなぁ 改めて校舎を見て立ち止まる。 自分が今まで通っていたボロボロの小さな中学校とはかなり違い、中世ヨーロッパの感じを取り入れたレンガ作りの巨大な建物で、ファンタジーの世界に出てきてもおかしくない。 受験の時は·····緊張と合否の事しか頭に無かったからちゃんと校舎を見ていなかったし、、、、 これから三年間ここで過ごすのかぁ。 無事に過ごせるのか、友達は出来るのか·····など少し不安を抱きつつ指示のあった体育館へ再び歩き始める。 校舎、体育館、門を繋ぐ道には桜が均等に植えられていて、ここの桜も綺麗に咲いていた。 それを見ていると多少だけど不安が薄れる気がする。 体育館の中に入ると一年A組、B組、C組、D組、E組、F組と書かれた札を持つ先生らしき人物達が各クラスの席の前で立っていた。 人も集まってて体育館内はガヤガヤと話し声がそこら中でしている。 確か·····合否の郵送で中身に自分がこれからお世話になるクラスと番号が書かれた小さい紙が入ってたな、、、 「えっと·····俺は、A組の二番だったな」 A組の札を持つ先生に名前を告げ、指示を受けた席に着く。 「ふぅ〜···」 入学式終わったら何処で時間を潰そう·····。 歩いてる時に見付けたカフェが気になるし行こうかな、それとも本屋を探してみる? どうせ家に帰っても息苦しくなるだけだ。 あの人に会っても嫌味か暴力、弟は全然関わってこないし。 そーいえば、、、、 弟と最後に会話したのはいつだったっけ············ 「なあなあ、お前何処から来たの?」 「、」 突然後ろの奴が俺の肩をたたいて聞いてきたので首だけ肩をたたかれた方へ向ける。 相手の身長は高く、12cm以上は差があるだろう·····身体つきもスポーツをやっている様でガッチリとして、肌が焼けており健康的な色をしていた。 髪が黒みを帯びた赤色のベリーショート。 目は少し赤みのある梔子色(くちなしいろ)、一重で細く流れるような切れ長な目だ。 顔のパーツが整っており··········いわゆる【体育系爽やかイケメン】という言葉が似合いそうな人、、、 因みに俺はというと、 紫色を帯びた暗い紺色のショートで目の色はラムネ色のネコ目。 身長も158cm·····小柄で筋肉が付きにくく、また肌は青白い。周りからはカッコイイではなく可愛いと言われ、女の子とよく間違われる。 今日着ている制服もブカブカだ。 「俺は田舎の学校からだよ。三田中って知らないよね、」 すると相手は少し上を向きつつ、顎に手を付きながら 「三田中?、初めて聞いた!俺、関中から来た小林 《こばやし》 翔太(しょうた)っていうんだ。よろしくなっ!」 満面の笑みで自己紹介され、あぁ···これが陽キャラというものなんだろうなぁーと思う。 「小林君、俺は飯島蒼。好きに呼んで」 「蒼って呼ぶ!俺の事も翔太でいいよ」 「オッケー、翔太」 それから入学式が始まるまで翔太や周りにいたクラスメイトと何処から来たか、趣味や今までやってた部活等の話で盛り上がる。 但し、一人だけ凄く目立つクラスメイトが居たがそのクラスメイトは我関せず、といった感じで会話に参加してこなかった。 なんか·····聞いた男子校とかなり違う気がする。 楽しい三年間になりそうだ。
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