(四)

4/5
1084人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
 彼はずっとじっと私のことを見ていた。 「本当は中学の卒業式の日に言うつもりだったんだ」 「もしも昔と変わっていないなら、付き合って欲しい」 「サークルの飲み会で見つけたとき、びっくりしたよ。俺は一目見て気づいたんだ。あ、三間坂がいる、って」 「正直言って、もう会えないと思ってた。でもこれって奇跡じゃね? まさかこうして会えるとは思わなかったし」  私は、何も答えられなかった。付き合ってくれなんて言われたことは一度もなかったし。何よりもあの有田にそんなことを言われたのだ。あの意地の悪い有田に。好きと言われて悪い気はしない。でも有田に言われたと思うと、複雑な気分だった。 「ねえ、それって、今、返事しなきゃダメ?」  私は聞いた。彼は頷いた。 (続く)
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!