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夜の王立図書館の中は少し不気味でした。
唯一の灯りを手に、私は1人で秘蔵書庫に向かっていました。
「まさか、初っ端で貧乏くじを引かされるなんて……って、もしかして、くじだけに!」
何てしょうもないギャグを口にしても面白くはない。
私はあの後くじの紐を引いた。すると、先端が赤く塗ってあって、当たりかと思ったのも束の間。まさか唯一のハズレだったなんて。
今更だけど皆んな何で、夜間の書庫管理が嫌なのかよくわからない。
啜り泣く声が怖いとかなのかと、想像してしまったけれど、あのリーダーが驚いて腰を抜かす様子なんて想像すらできなかった。
「まあいっか。せっかく秘蔵書庫管理員になったんだし、どうせならたくさん読み明かすぞ!」
私は小さくガッツポーズをした。
それからやって来たのは、カウンターの奥も奥。そこには南京錠が掛けられていて、普通には入らないようになっていた。
しかも、鍵穴に挿す鍵は複製が出来ないように、魔法で加工された特別製だった。
しかし、
「まあこのぐらいなら、簡単に作れちゃうけどね」
魔法学を学んできた私には、このくらい余裕だった。
5歳の頃、たまたま実家で読んだ魔導書をきっかけに魔導書にどっぷりハマった。
それ以来、魔導書を探求するに連れて、同時に魔法にも目覚ましく興味を抱き、今に至る。
そんな魔導書馬鹿が私なんだ。
「自分でもわかってたけど、私ってとことん魔導書好きなんだよね。よいっしょ、開いた開いた!」
さてとお宝の一つや二つ、簡単に見つけちゃうぞ。
入り口を開け、先に進むとそこにあったのは魔法の蝋燭の列だった。
私は魔法で火をつけると、蝋燭の灯りを頼りに通路の奥を覗き込むと、そこには壁一面が本棚で、その中にたくさんの魔導書が並んでいた光景が飛び込んできた。
「す、凄い……凄すぎるよ!」
一瞬言葉を失った。
しかしすぐに正気を取り戻し、興奮のあまり叫んでしまう。だけど大丈夫だ。ここには私以外、誰もいないのだから。
早速お宝の山の中に飛び込み、背表紙を確認して回る。
「凄いな。これ全部秘蔵の魔導書なんて」
秘蔵書庫に仕舞ってある魔導書の中には、歴史的な価値や重要な文献なんかも保管されている。それを管理するのも私達の役目なんだけど、それでも中には歴史的な強大な魔法が記された魔導書もある。
それらはすぐに見つかった。
私は嗅覚も鋭いのだ。
「これはガパァイズの呪書!確か、東の大国に伝わる呪いの書物で、3000年前に書かれたものだよね。人を簡単に呪い殺せるとか噂のある」
それだけじゃなかった。
隣の本棚には、
「シュヴァルグ・ランゼツの毒解本!数多の毒を知り尽くした、半世紀前の魔法使いの遺作だよね。それにこっちは、サンザーラの雷雲伝票記。雷を自在な操る秘術が、面白おかしく書かれているっていう、自伝だよ。凄い、凄すぎるよ!」
私は興奮のあまり、テンションだけが先を言って、上り調子でした。
こんなお宝が目の前にある。しかも誰も見ていない。早く読みたい。読み明かしたい。そんな気持ちが頂点まできた時、ふと私の耳に聞こえて来たのは、この書庫の噂でした。
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