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『公園通りも歩いて二人でたくさんお話したわね。それでも全然話し足りなくて』
『あは。確かに。その時、キミのお腹が鳴ってさ。帰りに食べに寄ったパスタ屋さん、美味しかったよね』
『もう、やめてよ、恥ずかしい。でも、また食べに行きたいわ。あなたよく覚えてるわね。男の人って、そういうの忘れてしまうっていうじゃない?』
『忘れるわけないよ。キミと初めて食べに行った場所だもん。あの味は覚えてる』
『私もよ。二人でシェアして食べたわよね』
『ああ、僕はピリッと辛みの効いたペペロンチーノを、キミはホワイトソースのかかったカルボナーラだったよね。本当に美味しかったなあ』
『…………』
『ん? どうして何も言わないんだ?』
『それ、誰と食べに行った話?』
『えっ? もちろんキミとに決まってるだろ』
『あり得ない』
『何でだよ。キミこそ忘れたのか?』
『私は海苔のかかった、ものすっごーく美味しい和風パスタを頼んだんですけど』
『あっ……』
『別れましょう。あなたとはもう無理ね。サヨナラ』
『ま、待てよ! 誤解だってば!』
男は、肩を落としてスマホを閉じた。
――はてさて、真実はいかほどに。
とはいえ、こんな妄想、きっと私にしかできないかも……なんて、ね。
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