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 ――それから時は立ち。  十六歳となったリリアは王都にある、王都都立ヨークシャ学園に入学する。そこで第一王子エルドラッドとその他の攻略者達、悪役令嬢エルモが顔を合わせて。  この乙女ゲームはスタートする。    精霊の森近くの避暑地に来ていた、リリアの遊び相手の男の子が、この国の第一王子殿下エルドラッドだと知る。  その他の攻略対象には宰相の息子、王子の側近、伯爵家の義弟、魔法使いがいて、共通のルートが終わり、ヒロインがお気に入りを選択した時点で、恋をする相手が選ばれる。  王子ルートから発展するフラグを立てると、隠しルートに入る。あの夏の日に助けた白いトラの精霊獣が攻略対象として、でてくる。  この精霊獣と結ばれるルートは過酷だった。  それは王都を揺るがす感染病の一種【熱病】。次々と熱病に倒れていく市民たちを助けなくてはならない。  このルートではヒロイン、リリアの聖女として覚醒する。感染病の一種【熱病】を聖女のちからで治して、病気を広めた諸悪の根源、悪役令嬢エルモと戦うことになる。     『君をかならず守るよ』ヒロイン側の白い精霊獣と。 『お前に俺の力を貸してやろう』悪役令嬢側に付く黒い精霊獣との戦い。  戦いの場面が王都になる為。戦いが激しくなるにつれて、建物は壊れて大勢の人々が傷付き住む場所を失う。  ゲームの終盤。ヒロインは白い精霊獣の力で悪役令嬢を倒す。敗れた悪女令嬢エルモは黒い精霊獣と共にこの国から消えて、平和が訪れるといった内容だった。 (乙女ゲームでここまでやるのと、昔の私は思ったわ) ❀  この世界が乙女ゲームだと知り目覚めると、エルモはエルドラッドのベッドに寝かされていた。右手が温かく感じてベッドの脇を見ると、エルモの手を握り締めエルドラッドが寝ていた。 (………傍にいてくれたのね)  優しい王子――しかし、エルモは前世の記憶を思い出し、知ってしまった。  この優しい手はいずれ離れていくと。  エルモはエルドラッドとヒロインの邪魔をする悪役令嬢で、エルドラッドとはけして結ばれないのだと。 『……エルドラッド様』  彼の名前を呼べば寝ていたはずの、エルドラッドが勢い良く顔を上げた。エルモを心配して泣いたのか……真っ赤な瞳で心配そうに覗き込んだ。 『気が付いたか、良かった……心配したぞ』 『ごめんなさい。もう、大丈夫ですだから……エルドラッド様は泣かないで』 『ぼ、僕は……グズっ、な、泣いてなどいない!』  泣き虫で優しいエルドラッド様……いまだけは側にいたい。徐々に思い出される物語を垣間見ながら、エルモはエルドラッドと王城で過ごした。    ――月日は流れて、エルモ達は乙女ゲームの舞台が始まる、十六歳へとなった。
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