二十四

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二十四

 今日はパン屋のバイトの休みの日。朝日の光に目が覚めると、エルモはグルと向き合い寝ていた。 (う、近い、グルさんの寝顔! ……可愛い) 「グルさん」  呼びたくなり囁くように呼んでみた、すると、グルの眉間にシワがよる。 「……ん、なに、エルモ?」   「起こすな」とか「うるさい」ではなく。まだ眠そうに、グルはエルモの名前を呼んだ……可愛い。こんなに幸せな日々がズッと続くといいな。  優しいグルの側で笑っていたい、大きなグルに包まれたいーーできたらグルさんにも幸せだと感じてもらいたい。フフッ、それは贅沢かな? 「エールーモー!」 「ひ、きゃっ」  いきなり寝ぼけたグルの頬が近付き、エルモの頬にプニッと引っ付いた。そして、グルはそのままスースー寝てしまう。 (え、寝ちゃったの? グルさん、ほっぺが引っ付いたままだよ)  どうしようか悩んでいるうちにグルから熱がつたわり、エルモを二度寝の眠りに誘う。今日は『精霊の森に行く』と約束したのに。 「グルさん、朝だよ。起きないの?」 「んー、もー少し寝る。エルモもゆっくりして、いいぞ」 「……フフ、わかった」  ーーグルさんの言葉に甘えて、私も目を瞑った。 「……ンッ」  グルの温もりを感じ、二度寝の眠りから覚める。あれ……眩しい、いま何時? 隣のねぼすけグルを見ると。グルはエルモの寝姿を肩肘をつき、目を細め、見つめていた。 (グルさん?) 「おはよう、エルモ」 「おはようございます、フワァ、よく寝ました」 「フワァ、俺もよく寝た……」  寝ぼけ顔の二人の緩やかな朝? ……違う、お昼が始まるのかな?  「お腹空きましたね。朝? お昼? の、ご飯の準備始めます」 「ん、頼む……アレ、兄貴は静かだな」 「そうですね……」  グルの言う通り。いつもなら「腹減った!」と、二人の間に入って寝ているのに。グレはどこだと探すと、近くから声が聞こえた。 「グーグー、オレは拗ねて寝ている。ラブラブな二人はオレを起こすな!」  グレはベッドの隅っこで拗ねて、丸まり狸寝入りをしていた。 ☆  大寝坊の二人と狸寝入りの一人は身支度を整えて。朝昼兼用のハチミツとバターたっぷりのパンケーキを食べ、グルの転移魔法で精霊の森に一瞬で移動する。 (あいかわらず、転移魔法って不思議ね)  森の入り口でグレは、グルに聞く。 「森の中を通って、オレ達の村に行くのか?」 「いいや、兄貴がいないか探すときに使用した、転移魔法の魔法陣が村の入り口にあるんだ――それを使って転移魔法で行こうと思う。その前に悪いけど、ちょっとここで待っていて」  グルは近くの茂みに入って行き、しばらくして戻ってきたグルの手には、何処かで摘みとったのかはマーガレットの花束があった。 「エルモ、グレ、お待たせ。じゃー行こうか」  その花束の説明をせずに村に行こうとするグルを、グレは小さな前足で"待て"と止める。 「なんだよ、グレ?」 「お前それ、ちゃんと花の精霊に断ったのか?」  花の精霊? 「断ったよ。精霊にはちゃんとお礼をして、花を貰っていくと伝えた」 「それならいいけど」  グルとグレ――二人は花の精霊だとか、エルモの知らない話をしている。それに少し寂しいとエルモは思ったけど、何も言わず二人の話を聞いていた。 「それと、前にも言ったけど。森に凶暴なモンスターがでるから、一人での行動は控えろよ」 「わかってる。それより、花の精霊にお礼を言われたよ「わたし達を守ってくれる、白ちゃんにありがとうと伝えて」だってさ」  それにグレはタジタジになり、 「あ、いいや、その原因を作ったのはオレだ」 「兄貴! ……それは違うと何度言えばわかるんだ! いい加減にしろ! 森に住む精霊はみんな言ってくる、怪我をしてまで私達を助けてくれるって」 「それは……オレに力がなくて、弱いからだ!」  言い合い、睨み合うグルとグレ。 (グレちゃんは……一人でズッと森の精霊を守っていたんだ……だから、初めて会ったときに怪我をしていたんだね)  エルモはグレの近くにしゃがみ込み、柔らかい頭を撫でた。 「グレちゃんは優しいね」 「エルモちゃん? オレは……あ、いや、グル。さあ、俺たちの村に行くぞ! 早くしろー、早くだ!」 「ん? 優しい兄貴はどうした?」 「グル! お前、まで言うのか!」  グルとエルモに優しいと言われ、撫でられて、グレは大いに照れてた。
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