二十五

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二十五

 小さな女の子はグレの周りを飛び。プンプン、文句を言いはじめる。 「せっかくさぁ~気持ちよーく、日向ぼっこをしてお昼寝してたのにぃ~白ちゃんはなんの用なの様よ」 「今日はオレじゃ無い、こっちだ」  グレはグルとエルモを短い前足で指差すと、真っ白なフワフワなドレス、真っ白な髪に赤い花をつけた小さな女の子はエルモを見て、赤い瞳をまん丸にした。 「白ちゃん……あなたはまだ懲りて無いの~! その子、人間じゃない~、あの時――森の大精霊様に怒らせて懲りたでしょう!」 「だから、その子はオレのじゃない。グルのだよ」 「はぁ~っ、え、黒ちゃんにいい人ができたの? ええ! だから、シルフ村を好きな黒ちゃんが見回りのあと、すぐに帰っていったのね」  へぇ。黒ちゃんが。やるじゃない。パタパタと、グルの周りを飛ぶ。 「別にいいだろう!」  グルがやめろと言っても小さな女の子は話を聞かず。グルをとエルモの周りを小さな羽を羽ばたかせて、楽しそうにクルクルと飛んだ。   「この子、なかなか可愛い子じゃない。黒ちゃんはその子をここに連れてきて何するの?」 「なにって、俺はエルモに大事な話があるんだ。グレとチタ、二人も一緒に聞いて欲しい」  グルから大事な話と聞き、女の子は"ハッ"と、何かに気付き、ニヤニヤしながら小さな肘でグルを突っついた。 「フフ、やるわね。あ、でも、黒ちゃんは闇の魔力が強過ぎるから、ここで告白しても効果ないよ~大精霊様に森の守護者として選ばれたのは白ちゃんだし。それに、このフェリチタの木はもうすぐ枯れるわ……そしたら、この木の精霊のわたちも消えてしまう」  悲しげに呟くと、グルは首を横に振り。 「俺とグレがチタを枯れさせない! このフェリチタ木は俺の憧れなんだ。村のみんながこの木を好きで、木の下で好きな人に告白したり、結婚式をあげていた。俺にも大切な人が出来たら――このフェリチタの木の下で、想いを伝えたいと思っていたんだ」  グル、グレ、チタの三人は集まり、楽しそうにエルモの知らない話しで盛り上がっている――その姿を見て、エルモはあの日の二人を思い出した。       ――仕方がないことだけど、寂しいな。  いきなりグルの手が肩を持ち、エルモを振り向かせる。そのときの――エルモの表情を見たグルは眉をひそめた。 「エルモ、ごめん……エルモには知らない話ばかりだったな……」  焦るグルに。 「私は平気よ(慣れているし)私達は最近会ったばかりなのだもの、知らないのは当たり前だわ。気にしなくていいのよ」  やんわり言ったつもりのエルモ、その物言いに、ますますグルの眉間のシワは深くなる。 「気にして、気になるって、怒れよ!」  グルに強引に手を引かれて、その腕になかに、キツくエルモは抱きしめられた。 「あークソッ。初めてエルモに会った、あの日の――悲しく、寂しい瞳だ。させたくないと思っていたのに。エルモ、俺達は、お互いに知らないことばかりだ。だから、もっと話そう俺はエルモのことを知りたい、エルモも俺を知ってくれ!」   「グルさん……」  知らない私が話しかけて、楽しい雰囲気を壊したくないし、聞くのはワガママだと思っていた。聞いてもいいんだ。嬉しい……寂しい感じていたエルモの心が一瞬でポカポカに温かくなった。なんて素敵で優しい人と出会えたのだろうか。エルモは嬉しくて、その言葉に応えようと、力を込めてグルを抱きしめた。  フェリチタの木の下で、二人はしばらく抱きしめあっていた。グルは大きく息を吸い込み、意を決して、エルモに話しかける。 「あ、あのさ……エルモ。俺、エルモに伝えたいことがある」  グルに肩を押されて抱き合う形から、エルモはグルと見つめあう形になる。フェリチタの木の下でグルはマーガレットを、エルモに差し出して大声を上げた。 「俺はこれからもエルモの側にいたい。まだあって間もないがエルモを守りたい。エルモを必ず幸せにする……俺と付き合って欲しい!!」  とても、嬉しいグルの言葉だった――その言葉にエルモはグルに飛び付きたかったけど。 (私だって……)  告白にいつまで経っても返事が返ってこず、差し出したマーガレットを受け取らない、エルモをグルは見て声を上げる。  そこには"ふくれっ面"のエルモがいた。 「はぁ? なんだよ! その膨れっ面は!」  いきなりのエルモの行動に、グレとチタも驚く。 「おい、エルモちゃん! いまの流れでそれは酷いぞ!」 「そうだ〜、酷いぞ、人間~!」 (わかってる。言うのに勇気がいるの――がんばれ私、自分の気持ちをグルさんに言うのよ!) 「エルモ?」  一人では…… 「嫌よ」 (あ、緊張して声が出ない……ちゃんと、グルさんに伝えたいのに。いまの私の言葉に、グルさんが悲しい顔しちゃった) 「え、俺が嫌なのか?」 「違う!」  エルモはグルから強引に、マーガレットの花束を奪い取り。 「…………わ、私だって、グルさんを守り、グルさんを幸せにしたいの! 私もグルさんの笑顔を見たい。二人、一緒に幸せになりたいの。私だけではダメ、あなたも一緒がいいーーの!」  言い終わった後。身体中を真っ赤にさせたエルモは、貰ったマーガレットに顔を埋めた。精一杯、グルに伝わるように伝えたのだ。  ーーあなたと、一緒がいいのだと……。
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