二十六

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二十六

 一緒に幸せになりたいと、エルモは精一杯の告白をしたのだけど、グルは何も言ってこない。 (もしかして、ふくれたから怒ってしまったの?)  不安でマーガレットから顔を上げると、出会ってからまだ一度も見たことのない、ゆるゆるな表情をグルは浮かべていた。 (嘘……いつもはキリッと凛々しい表情が緩んでる。こんなに嬉しそうな顔をされちゃうと、私まで緩んじゃうよ)  向かい合って"二ヘヘッ"と照れ合う二人と、それを見て二人はホッとして呆れた声をあげる。 「な~んだ、心配したのに。二人は仲良いのね、安心したよ~」 「そうだな。グルのあんな表情は初めて見た……嬉しそうだ」   グルを優しく見つめて、グレは笑った。 「えへへっ、二人で幸せにか……俺もエルモと二人で幸せになりたい」 「ええ、なりましょう、グルさん。もちろん、グレちゃんとチタちゃんも一緒にね!」 「オレもか!」 「わたちも!」 「いいな! みんなで幸せになろう!」  グルに優しく見つめられてキスされるのかと思い、目を瞑ったけど。くっ付いたのはおでこと、おでこ、その後に頬がくっつく。 (……ドキドキする。鼓動が早く、頬が熱いわ)  くっ付いた頬が離れると耳まで真っ赤にした、エルモとグルは見つめ合う。 「よろしくね、グルさん!」 「こちらこそ、よろしく」   ――その直後、チタが。 「お! おお〜なんだ? 体が温かい〜! 幸せな想いが身体中をめぐるよ~久しぶりの感覚ぅ~!!」  チタはプルプル体を揺らして、小さな頬をピンク色に染めて悶える。その様子を見ていたグレ。――そして、いち早くフェリチタの木になにかを見つけた。 「グル、エルモちゃん、チタ、コレを見ろよ、蕾だ! このフェリチタの木の枝に蕾がついた。よかった、この木は枯れていない! チタは消えなくて済む!」  その声にチタも驚く。 「ほんとだぁ〜、蕾だ、枝に蕾がついた!」  枝に一つの小さな蕾ーーその蕾の周りをチタは飛び、グレとチタは喜ぶ。 「二人とも大喜びだね」 「ああ、村の大切な木――フェリチタの木に蕾がついた。もしや、俺たちの告白でか? それなら――俺とエルモの想いが膨れ上がれば、もっとフェリチタの木に花が咲くのか?」 「え?」  いきなりガッチリ、グルに肩を掴まれた。そして、真剣な表情をしたグルの顔が近付いてくる。いきなりのグルの行動にエルモは焦る。 「ちょっと、待って、グルさん!」  マーガレットの花束で顔をガードしてしまい、グルはポフッと花束に顔を埋めた。 「……エルモ? ダメか?」 「初めてだから、いきなりは恥ずかしい!」 「お、俺だって、初めてだ!」  キスしたいと諦めないグル……だけど、こんなに真横で二人が。グレちゃんとチタちゃんが瞳をランランさせて"早くしろ"って圧がすごいし。一度、恥ずかしいと思ったら――どんどん恥ずかしくなる。 「ほ、頬にキスするから、いまはそれで許して!」 「うん、わかった」  グルの返事は早かった。  日も暮れてきたからと精霊の森の村から家に帰り、夕飯にチーズとツナのパンプティングを作り。グルとグレ、エルモは和やかな夕飯を終えた。エルモはキッチンで後片付けを始めた。 「エルモ、少し奥の部屋にいる」 「はーい」  グレはお風呂に行き、グルは作業をするからと、奥の部屋に入って行った。しばらくして奥の部屋からグルの陽気な鼻歌が聞こえてきた。  ――グルさん上機嫌ね。 「もう、そんなに嬉しかったの?」  フェリチタの木の下で、グレとチタに見守られながら、エルモはニッコリ微笑んだグルのほっぺにキスしたの。
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