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 エルドラッドの変化は学園に入学をして、直ぐに起こる。  ――それは入学式後のこと。  エルドラッドとならんで学園の渡り廊下を歩いていた。その渡り廊下の反対側からこちらに歩いてくる、ピンクのふわふわ髪、ぱっちりとしたピンク色の瞳の女の子。  一目見て、彼女がヒロインのリリアだと気づいた。このときエルドラッドがリリアに声をかけて、この物語は始まる。 『君………もしかして、トト村のリリアちゃん?』 『そうですが………誰?』 『忘れてしまったのかい? 子どもの頃、夏になったら一緒に遊んだじゃないか』 『え、まさか………エル君?』 『そうだよ、君はあの頃と変わらないね』    二人はすぐに意気投合して傍にエルモがいるのにもかかわらず、昔の思い出の話で盛り上がる。 (ふたりの会話は乙女ゲームを思い出しているから知っていたけど……エルモに声もかけず、二人で盛り上がるのは無神経だわ)  しかし、この時の出会いをエルドラッドは、運命的な出会いだと思い。リリアが『エル君』と、エルドラッドを呼ぶことを許す。 『エル君』 『リリア』  周りの視線を気にせずお互いを呼び。  エルドラッドは自分を第一王子としではなく、普通の男性として接してくれるリリアに、好意を抱き始めるのだ。  そして、エルドラッドは言う。 『近頃のエルモは「王子として周りを見た方がよろしくて?」「周りが見ていますわよ」と僕に文句ばかり言うけど。リリアは僕の体を心配してくれて、笑顔で癒してくれる』と。  頭の中がお花畑。  いまのエルドラッドには何を伝えても無駄だと知った。ーーそれは二日前。王城でエルドラッドにお会いしたときのこと。 『なんだ、来ていたのか――僕はいまから、リリア嬢と過ごすから君は帰ってくれ』  と、冷たい言葉を浴びせたのだ。 (物語を知っているから、エルドラッドからの冷たい言葉は覚悟していたけど――本人の口から言われると、あんがい傷付くのね) 『わかっていますわ――私も殿下に会いに来たのではありません。きょうは王妃様に呼ばれて来ただけです………殿下には連絡が伝わっていなかったのかしら?』 『連絡? ああ、朝食のとき母上が呼んだといっていたな』 『よかった、おわかりいただけたようで。では王妃様との約束の時間ですので失礼いたします』  礼をして背を向けた――ほんと疲れる。  私を見れば自分のリリアにないか言うんじゃないかと、にらみつけ、言いがかりをつけてくる。 (悲しいけど、エルドラッドは忘れてしまったのね)  幼頃から自分の時間も持てず王城へと登城をして、王妃になる為に膨大な量の教育。ダンス、礼儀、笑い方、歩き方、テーブルマナーとたくさんの努力をしてきたことを。  それなのにエルドラッドは他の貴族がいるところで、婚約者でもないリリアと寄り添い、陛下がえらんだ婚約者のエルモに帰れと言い放つ。  ――ほんと、自分のことしか考えない。 (陛下と王妃もその行為を許して、黙認しているのも問題なのだけど)  はあ、私の両親にも疲れる。  エルドラッドが舞踏会、晩餐会でエルモをエスコートしないときがあれば。 『お前が、エルドラッド王子殿下の心を捕まえていないから恥をかいた!』 『よくも恥をかかせたな、たるんでいるのではないか?』  と罵られて、叩かれた。    この人たちも、エルモのことは考えてくれない。  誰も、私の努力を認めてくれない。  悲しいけれど、これが現実だ。
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