三十三

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三十三

 アルベルトが現れてからエルモはイライラしている。ほんとうに仕事の邪魔なのだ。何を思ったのか騎士団の所属なのにバイトの面接にくるわ、帰りに外にいたりと――友達との婚約破棄を私のせいにして恨んでいるの? としか思えない行動を彼はしてくる。  ――私は声を大にしていいます。全部あなたが招いたことです!   彼女は婚約者のあなたが好きでしたよ。  それから一週間後。その友達から結婚しましたと手紙がきた。やはりお相手は学園の書庫でであった真面目な方。いまは貴族と平民で、手紙のやり取りは余りできないけど、連絡先を彼女に教えておいてよかった。  一通だけと『幸せになって』と、フェリチタの花を添えた。  もしかするとアルベルトにも連絡か、噂を聞いたのかな。だからといってイジワルはもうけっこうです。 「なんなんだアイツは! エルモに意地悪ばっかりしやがって、むかつく!」  グルもアルベルトにイライラさせられていた。ほんと何を考えているのかわからない。お相手が欲しいのなら、騎士団に所属しているんだし、社交界にでればすぐにお相手は見つかる。良い人をみつけてサッサと婚約、結婚なりして欲しい。  婚約者に婚約破棄されて、リリアにも振られて、かまってちゃん? 寂しいとか? ――迷惑。    「グルさん、待ち合わせ場所変える?」 「そうだな、お揃いのペンダントがあれば場所がわかるしな。店主に頼んでパン屋の裏口から出れるようにして、本屋を通り肉屋の前で待ち合わせは?」   「いい案けど、裏口からおじさんとおばさんの家が繋がっているから……迷惑だと思う」 「……だよな。魔法で姿を変えるか」   「え!」  ――魔法ってそんなこともできるの? 目をパチクリさせて驚いていると。ニシシッとグルは笑い「せいぜい髪色を変えるとか、瞳の色が変わるだけどな」欲しいとお願いしたら。後日、変身用の魔導具を作ってくれることになった。  できるまでは絡まれるのだけど……。    数日後、バイトの帰りに。 「グレがフェリチタの花をエルモにも見せたいんだって」と言った。明日はバイトが休みなので。グルと、グレとチタと、一緒にフェリチタの木の下でお花見する。  グルに花見に何が食べたいかと聞くと「俺、卵サンドと、カツサンドが食べたい」どのグルの要望があり、帰りに八百屋とお肉屋によった。 「カツ用の豚肉三枚と、メンチコロッケ二つとコロッケ五つ! グルさん、帰りにコロッケ食べながら帰ろう!」 「おう!」  揚げたてのコロッケを食べながら帰った。  当日、グルは簡易キッチンとキッチン具を"アイテムボックス"にいれて持って行くから、村で調理できるといってくれたので。帰ったらスープの下ごしらえと、カツの下準備をして、氷の魔石を使った冷蔵庫みたいな箱にしまう。 「揚げたてのカツ楽しみだ!」 「楽しみだね。そうだ、鶏肉が残っていたから、あしたもっていって唐揚げにする?」 「唐揚げ? 食べたい!」 「わかった、下味つけちゃうね」  生姜とニンニク、調味料で味付けをした。明日が楽しみ。その場でカツと唐揚げを揚げて、パンに挟んで食べる――贅沢ね。
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