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村に咲いた真っ白な花
精霊の森からグルの転移魔法で村まで移動した。グルとエルモを待ち構えていた、グレとチタは待っていましたと言わんばかりに、二人に抱きついた。
「きゃっ、グレちゃん、チタちゃん!」
「チタ、兄貴?」
二人の瞳はキラキラ光り、興奮しているのがわかる。そして、グレは小さな体でグルのズボンを引っ張った。
「グル、エルモ、こっち来て、スゲェぞ!」
「そう、そう、驚いちゃって、泣くかも!」
「おい、兄貴!」
グレとチタが前を歩き、その後ろを着いていくと、村の中央の木――フェリチタの木に、真っ白な桜に似た花が満開に咲いていた。
「キレイ、すごく綺麗! こんなに綺麗な花を咲かすのね」
「ああ、綺麗だな……クッ、昔をおもいだす」
花をみながら昔を思いだしたのか、グルは目頭をこすった。グレもチタも、そんなグルをみて涙目になって、みんなで泣き笑いしている。
(よかったね、グルさん)
グルが静かなエルモに気付き、目を細める。
「ちょっ、エルモ、泣きすぎ!」
「ふぇ?」
言われるまで、気付かなかった……
「わぁ、ほんとうだな!」
「アハハッ、ボロボロだぁ!」
「だって……」
(嬉しくて、涙がとまらない。……だって、ほんとうに好きだったの。この村のスチルを携帯の画面したりして眺めてた。花が咲いた。嬉しい!)
「……エルモ」
「グルさん、グレちゃん、チタちゃん、村のみんなが……このフェリチタの木を見て喜ぶ姿が見えたの」
涙でボロボロの顔で笑った。
「そうだな、エルモちゃん。村のみんなもぜったいに喜ぶ! 今度の満月はここで酒を酌み交わそう!」
「いいね、いいね! こんどの満月はにぎやかになる!」
「俺からばっちゃんに話すよ。みんな喜ぶぞ!」
「よろこぶな。オレはもっと喜ばす方法を知ってるぞ。グルとエルモちゃが……」
と言い。グレは口を何度も尖らす。それはまるで、二人にキスしろといっているみたい。チタも悪ノリして。
「そうだ! 黒ちゃんとエルモちゃん、チュウだ、チュウするの!」
グレとチタは――しばらく"チュウチュウ"とうるさかった。
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