三十八

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三十八

 とても嫌な夢だった。エルモはエルドラッド、リリアを恨むことなく婚約破棄されている。あの夢を見るまで、熱病にしようする薬草のことすら、エルモは忘れていたのだ。  ――このまま、何事も起こらないといいのだけど。    身なりを整えて、グルとグレに朝とお昼兼用のメイプルシロップがたっぷりかかる、フレンチトーストの食事をつくりはじめる。  ボールに卵と牛乳、砂糖を混ぜて、フォークでさした食パンをヒタヒタにひたした。次にフライパンにバターを溶かして、パンを入れて、弱火で両面じっくり焼く。  グレは甘い香りにゴクッと喉を鳴らして、エルモを足元から見上げた。 「昼メシ、エルモちゃんのフレンチトーストだ!」 「ああ、楽しみだ。エルモ、何か手伝うか?」 「はい、グルさんのコーヒーが飲みたいです」  まさせろと、グルは美味しいコーヒーをいれてくれた。    昼食のあとはグルと布団を干し、洗濯物、掃除をおわらせて、今夜の宴にむけての料理をはじめた。  グレの話だと、みんなは久しぶりの村にいけると喜んで、たくさんのお酒とアテ、果物などを準備しているらしい。  ――私は唐揚げとカツを村であげて、揚げたてを食べてもらうの。 「こんや楽しみだね。みんなに「美味しい」っていってもらえるかなぁ?」 「大丈夫だよ。エルモちゃんの唐揚げおいしかったからな、グル」  エルモは二人の話を聞きながら。カツをすじ切りして塩コショウをかけ、小麦をつけとき卵にくぐらせ、パン粉をつけた。  同じようにとり肉にも塩コショウをして、すりおろしたニンニクと生姜、お酒を肉にすり込んでねかせる。 「ああ、エルモの唐揚げは美味かった。でも俺はサクサクのカツも捨てがたい」  グルとグレは唐揚げとカツを気に入ってくれた。  だけど今夜――グルは精霊獣の姿に戻るから、エルモの手伝いはできないので。いまカツと唐揚げの下味準備と、必要なキッチン具とコンロをカバンに入れている。 「グルさん、グレちゃん、サラダもいるかな?」  揚げ物ばかりだと、サッパリした物も食べたくなる。野菜スティックとか、ちぎりレタスがあってもいいか聞いてみた。 「いいな。俺はキュウリ、大根、にんじんの野菜スティックがいい、ドレッシングも作ろう!」 「わかった。みんなが食べやすい大きさに野菜を切るね」  グルとグレ、エルモは楽しく宴の準備を進めるのだった。
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