三十九

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三十九

 唐揚げとカツ、野菜の下ごしらえが終わった。グルは奥の部屋に行き銀色の指輪を持ってくると、エルモにみせた。 「はい。この前に言っていた、姿替えの指輪ができたよ」 「姿替えの指輪? ……もうできたのですか?」    ――まだ、ネックレスのお礼もできていないわ。  少し困惑気味のエルモに「エルモに何かあってからでは遅いからね」と言い。グルは指輪の説明をはじめた。 「使い方は――指輪に五秒くらい触れると姿が変わるようにしたから。今夜の宴会のときにでも試してみるといい、戻るときはもう一度触れば戻るから」 「は、はい……指輪に触れるのか。グルさん、ありがとう」  と、グルはエルモの手を取ると、その指輪を左手の薬指にはめた。その位置。グルは知っているのか知らないのかわからないけど、サラッとつけられてしまいエルモは悩んだ。  ――指輪の場所の意味を知っているの?  しかし、その悩みもすぐになくなる。グルの左手の薬指に同じ指輪が付けられていたのだ。えっ、ええ照れるエルモと嬉しそうなグル。それをグレは気付いたが、茶化さず二人をやさしく見つめたいた。   「時間だ、待ち合わせの場所に行こう」 「はい!」 「おう!」    夕方――下ごしらえができて村の中央に向かった。村のみんなも徐々に集まってくる。その手にはリュック、肩掛けカバンをパンパンにして持ってきていた。  それはエルモたちもで――夕飯、寝泊まり用の寝袋などを準備している。  グルは中央に集まったみんなを見渡して。 「よし、ばっちゃん、みんなも揃ったな? いまから転移魔法で精霊の森に移動します」 「よろしくな、グル」 「「よろしく、グル!」」  グルは杖を取りだして魔法を唱えると、村を覆うほどの魔法陣が現れて、みんなを一瞬で精霊の森の前まで運んだ。しばらく森の前で休憩して村まで転移魔法した。 「「!」」    ばっちゃん、村のみんなは久しぶりにかえってこれた自分達の村と、花を咲かせたチェリチタの木をみて、大喜びして大泣きした。 「グル、グレ、昔のように綺麗な花だ……」 「ばっちゃん、泣くなよ」 「そうだよ、ばっちゃん!」  グルとグレはお年寄り、大人と子供らが泣きながらはしゃぐ姿をみて微笑み、目頭を押さえていた。みんなは口々に「グル、エルモちゃん、ありがとう! 二人の愛のおかげだ!」といいだす。 「そうだ! グルとエルモちゃんの愛のおかげだな! 婚約もしたみたいだし!」 「「婚約!」」  グレのいきなりの爆弾発言。左手の薬指の指輪をみたみんなは驚き、いっきに祝福モードに切り替わる。まだ日暮れまえなのに宴がはじまった。 「兄貴は気付いていたのか……でも婚約か、いいな。フェリチタの下で誓い、婚約するか?」  ――グルさんと婚約? 嬉しい! 「はい、誓いましょう。グルさん」  みんなに見守られながら、エルモはこの日――グルの婚約者となった。
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