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四十一
あの後――アルベルトは街からヨリを連れて、馬と剣をとりに戻りにもどり、ねんのため鎧も身につけた。
馬を走らせヨリの案内で王都を離れて、小麦畑のなかを走り、着いたのは大きな森の前。
ヨリは馬を止めてアルベルトに伝えた。
「アルベルト様、ここが精霊の森と呼ばれる森です」
着いた森を見上げて、アルベルトは馬を降りた。
「そうか……案内ありがとう。ヨリはこの場で馬を見ていてくれ」
「はい、かしこまりました」
ヨリを森の前に残して、アルベルトは剣を片手に森に入る。
だが、森の奥に、奥に進んでも入り口に戻ってくる。つぎに木に印をつけて進んでも、やはり森の入り口に戻ってきた。
「なんなんだ、この森は?」
――進んでも、けっきょくは入り口に戻ってくる。
さいわい、森の中でモンスターに遭遇しなかったが……同じ場所を行ったり来たりして、アルベルトは苛立ちをあらわにした。
「クソッ!」
また、入り口だ!
「アルベルト様、どうされましたか?」
「ヨリ、いくら森の中を進んでも、けっきょくは入り口に戻ってくるんだ」
そうヨリに言えば、彼は頷き。
「やっぱり、アルベルト様もそうなりましたか……この森は昔から"迷いの森"だと噂されています」
――迷いの森?
「ハァ? それを早く言え! いらない体力を使っただろう!」
「すみません。ぼく自身、噂だと思っていたので……まさか、ほんとうだとは思っていませんでした」
すみませんと、ペコペコ頭を下げるヨリ。
「まあいい。さてと、どうするかなぁ?」
ポケットからリリアからの手紙を出して、もう一度確かめた。
そこに『上上右下左上』と変な呪文が書いてある。さっきは気に留めもしなかったが、もしかして森の中をこの通りに進むのか。
――しかし、ちがう国のリリアはなぜ? このことを知っている?
まあいい。
日も暮れてきた、これが最後だとアルベルトは手紙のとおり進んでみることにした。
❀
「おや、次に進みましたか……これは、まずいですね」
宴中の村。シルワは夕方ごろから"精霊の森"に、誰かが入り込んだことに気付いていた――それはグルとグレも同じだった。
日も暮れて、満月の明かりで精霊獣となったグルは。変化の魔法で黒髪とエメラルド色の瞳になった、エルモを守るように寄りよりそった。
シルワのそばにいるグレは。
「どうする、シルワ様? オレが森に入ったヤツを追っ払ってくるか?」
「そんな危ないことグレはしなくていいです。いまから緑魔法をつかい、森の木々を移動させて村全体をかくします」
と言い。シルワは魔法をつかい、村を森の木々て隠した。
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