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四十四
エルモに"平気だ"といったが、小さく「アルベルトのやろう」と、苦し紛れにグルはつぶやいた。
(アルベルト?)
エルモにさんざん捕まると言っていた、アルベルトがグレちゃんを捕まえたの? ――なぜ?
グルの態度と、宴からいなくなったグレ。
夢にみた……ソソル草、モンリス草――ゲームで「熱病」を起こす毒草。
記憶が曖昧だけど――「熱病」には黒い精霊獣グルと、白い精霊獣グレが関わっている。いやな胸騒ぎがする……ソソル草とモンリス草が「熱病」を起こすと知っているのは――この乙女ゲームを知っている、転生者の私とリリアだ。
皇太子妃となる、リリアが「熱病」を引き起こそうとしているの?
――なんのために?
「ダメ……グルさん、グレちゃんを一人でいかせてはダメ」
「エルモ?」
グルは追いかけたい気持ちを抑えて、私を守ろうとしてくれている。でも、リリアとグレちゃんが会えば、また彼女に傷付けられてしまう。
「リリアなんかに会ったら、昔のようにグレちゃんが傷付いてしまうわ!」
エルモは、グルにしがみつき叫んだ。
「……むかし? エルモ、どうして兄貴を傷付けたのが、リリアだと知っているんだ?」
あっ!
「そ、それは……言えないけど。はやくグレちゃんを連れ戻さないとファーレズ国だけじゃなく、ここでも「熱病」が起きてしまうかもしれない!」
「熱病?」
コクコクグルに頷いた。治し方がわからないから、みんなが倒れてしまっても治せない……どうして、忘れてしまったの。
「グルさん!」
「待て、エルモ!」
焦るエルモに落ち着いてと、シルワが話しかけた。
「エルモちゃん、大丈夫ですよ。グレは「熱病」となる元の、毒草を消しに向かったのです」
「え、グレちゃんが……毒草を消せるの?」
「はい、光の力を持つグレにしかできないことです。それより――エルモちゃんが大精霊しか知らないことを知っているのか、聞きたいですが――後にしますね」
大精霊しか知らないこと――ゲームではそんな説明がなかった。でも、知っている人がいてよかったと、胸を撫でおろした。
だけど。
「グルさん……それと、これは違うわ。たくさんの人を傷付けたリリアに、優しいグレちゃんが傷付けられたくないわ! グルさん、グレちゃんを迎えにいこう!」
「いいな。エルモが言うならいこう。俺も兄貴には傷付いてほしくない! シルワ様ごめん……俺行ってくる。エルモ背中に乗って!」
グルはエルモを背中に乗せた。
行こうとしたところに、チタが飛んでくる。
「黒ちゃん、エルモちゃん……白ちゃんをよろしく」
「わかった。チタ、おとなしく待っていろ!」
「チタちゃん、待っていてね」
いく気満々の二人に、シルワはため息をつき。
「まったく、仕方ありませんね……フェリチタの花を持っていきなさい。なにか役に立ちますから」
「シルワ様、ありがとうございます!」
「「グル、エルモちゃん気を付けろよ!」」
みんなの声援を受けて、グレちゃんを迎えに向かった。
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